マーケティングを語るならドリルと穴の話は知っておくべき
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ビジネスの世界でマーケティングを語るとき、必ずといっていいほど引用される逸話があります。
それが「1/4インチのドリル」です。
あまりに有名な話ですので、ご存じの方も多いと思います。

あるとき、アメリカで1/4インチのドリルがヒット製品になりました。
どうしてこのドリルがヒットしたのだろうか?と、さっそく研究者が製造会社を訪れました。
研究者の名前は、セオドア・レビット、マーケティングの世界ではとてもよく知られた人物です。

「どうしてこのドリルがヒットしたのだろうか?」…
レビットの問いに対して、ドリル会社の社長は次のように答えたといいます。

「簡単なことです。それは、このドリルの性能がいいからですよ。」…
レビットは、この一言を聞いて、この会社はマーケティングがわかっていないと感じました。

なぜ、レビットはそう感じたのでしょうか?
社長の答えは至極自然のようにも思います。
ドリルがよく売れた…
それは、自分たちが努力して性能の良いドリルを作ったからです。
この考え方自体が間違っているというわけではありません。

しかし、レビットはこう考えます。
「顧客は性能がいいから、ドリルを購入したわけではない…
例えば、顧客は日曜大工をしたいから、そのためにドリルを購入したのである。
もっと具体的にいえば、顧客は、日曜大工に際して、ドリルを購入したのである。
顧客が欲しかったのはドリルではない…
ドリルの空ける穴だったのだ!」と。

レビットの有名な主張がここで登場します。
この主張は、大きく二つの点で画期的です。
一つ目は、ドリルが売れた理由を、ドリル自体から切り離して、顧客の側から捉えています。
この顧客の必要こそ、ニーズと呼ばれるマーケティングの出発点です。
そしてもう一つは、それゆえに、顧客はもしかすると、やむを得ず、ドリルを買ったのかもしれないという視点を取り込むことができています。

まず大事な点は一つ目です。
ドリルが売れた理由を、ドリルの性能から捉えた場合、顧客が望んだものはそのドリル自体だということになってしまいます。

この考え方は、ドリルマニアにしか該当しないでしょう。
ドリルそのものが欲しくて、そのドリルの性能に魅せられて購入するという人々は、それほど数多くいるはずがありません。

これに対してドリルが欲しかったのではなく、ドリルの空ける穴が欲しかったのだという視点は、より多くの顧客のニーズに合致しているように見えます。

顧客は1/4インチの穴を欲しかったのだと考えると、途端に、ドリルの性能の良さやドリル自体が、実は顧客の欲しいものではなかった可能性が出てきます。
特に、やむを得ずドリルを買っていたという場合、ドリルの性能を高めて値段の高い新製品などを導入することは、きっと顧客の反感を買うだけということになるでしょう。

ドリルが売れた理由を、ドリルそのものに求めるのか?…
それとも顧客の必要としてのニーズに求めるのか?…
ドリル自体が売れている現状からすれば、たいした違いはないと思うかもしれません。

しかし、ここでの小さな判断は、この会社の未来を大きく変えていくことになります。
もし、先の社長の考えに従っていれば、きっとこの会社は、ますますドリルの性能を向上させるべく、ドリルの研究開発に投資するということになるでしょう。

これに対して、顧客の欲しいものが必ずしもドリルではなかったと考えれば、この会社が取るこれからの道は変わったものになります。
ドリルではない別の機械を用いることで、より効果的に穴を空けることができるかもしれません。
あるいはそもそも、最初から穴の空いた木材を売るという案もあるかもしれません。

とすれば、10年後のこのドリル会社は、ドリルではなくレーザーのような機器を取り扱うハイテク企業になるかもしれませんし、木材の加工
を取り扱う住宅メーカーのようになっていくかもしれません。
マーケティングの思想は、企業戦略でもあるのです。

マーケティングにとって最も重要なことは、顧客のニーズに応えることです。
より高性能の製品を作ることでも、よりたくさんの製品を作ることでもありません。
簡単なことのように見えますが、その実現は決して容易ではないということも知っておかなければならないのです。

この記事の著者

mensedgeMEN’S EDGE編集部

MEN’S EDGE(メンズエッジ)は、「仕事や恋愛で他人と少しでも“差(エッジ)”をつけたい!」と考えるビジネスマンを全力で応援するメディアです。

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