マーケティングにおけるセグメントの意味とその具体例

マーケティングにおける「セグメント」とは市場の中で共通のニーズを持った顧客層を意味します。
このセグメントを行うことで、企業の商品やサービスの売上が大きく変わってくることはビジネスの世界では常識とも言えるでしょう。

またセグメントを考える際に、「顧客のライフスタイル」から考えるという方法があります。
特に一時期、VALS(Values and Lifestyles)と呼ばれる分類方法を中心にして、顧客のタイプ分けがさかんになされました。

例えば、高級な製品を望む傾向を持つ人々は、人生で一定の成功を収めている自己実現者が多い…
あるいは、実用的で機能的な製品を望む傾向の人々は、現実的で伝統的な創作者が多い…
といった具合です。

確かに人々のタイプ分けを通じて、ある程度は彼らの購買行動を予想することはできるでしょう。
今日でも、人々のタイプを考えることで、彼らのニーズに迫るという方法は十分にあり得ます。

しかし一方で、こうしたタイプ分けを過度に信用することは危険です。
例えば、こういったタイプの人々がどのぐらい安定して存在しているといえるのか、それから、彼らが本当に同じような購買行動をとるかどうかは、はっきりとしないところがあります。

VALSのようなライフスタイル分析にせよ、もっと簡単な性別と年齢による分析にせよ、おそらく最大の問題は、顧客の購買行動を彼ら固有の性格から捉えることができると考えている点にあります。
もちろん、それは間違いではありませんが、セグメンテーションの目的は、彼ら固有の性格を見つけ出すことではなく、あくまで顧客のニーズに応えることにあることを思い出しましょう。




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マーケティングにおけるセグメントのの具体例



かつて、「朝専用」という缶コーヒーが発売されました。
今では高い認知度を誇るようになった缶コーヒーですが、最初に「朝専用」コーヒーというキャッチコピーを見たときは、なるほど、目から鱗が落ちるようでした。

それは、今は存在していないセグメントをどう取り扱うのかという問題に関わっています。
言われてみれば、朝の眠気覚ましのコーヒーと、昼食後にみんなで飲みたいコーヒーは違っているように思います。
しかし一方で、同じコーヒーを飲むということも可能であり、朝でも昼間でも、これまで意識してコーヒーを変えていた人は少ないでしょう。

要するに、朝専用というセグメントは、例えば1杯目はビールというほど、単純な意味でのセグメントではなかった可能性があるのです。
それまではなかったかもしれない時間軸で変わるセグメントが、朝専用のマーケティング活動を通じて生み出されたのではないでしょうか。

あるいは「イノベーションのジレンマ」の著者として知られるクレイトン・クリステンセンというハーバード大学の教授は、セグメンテーションには落とし穴があるといいます。
すなわち、消費者を固有の性格によって切り分けていくことによって、消費者の「ジョブ」が見えなくなるというのです。
ジョブとは、ここでいうニーズのことです。

彼は、ある店舗のミルクシェイクを例に取ります。
その店舗では、朝のミルクシェイクがとても売れていました。
どうして売れるのだろうとセグメントをいろいろと調べたのですが、30、40代の男性によく売れているということしかわかりませんでした。

そこで、彼らが好みそうなフレーバーを増やしたりしてみたのですが、売上には何の変化もありません。
「なぜだろう?」と改めて調べていくと、彼らがどうして朝にミルクシェイクを買っていくのかが見えてきました。

彼らの多くは自動車で訪れて、ミルクシェイクを1つ買っていきます。
彼らは、毎日の通勤時間にミルクシェイクを飲もうと買っていたのです。

自動車を運転しながら飲むわけですから、コーヒーなどの普通の液体飲料ですと、こぼれてしまうかもしれませんし、取り扱いが不便です。
また、一気に飲んでしまうと残りの通勤時間が手持ち無沙汰になりますから、通勤時間にきっちり合わせて時間をかけて飲めるような製品
が必要だったわけです。

ミルクシェイクが最初は凍っていて飲みにくいという…
どちらかというとマイナスの要素も、彼らにとっては逆に魅力的だったのかもしれません。
そうとわかれば、通勤時間をエンジョイしてもらえるように製品を改良し、急いでいる通勤時間にミルクシェイクをすぐに買うことができるように専用のレーンを用意するなど、新たな対策を取ることができます。

顧客のニーズにもう1度目を向けること…
その上で、創造的なセグメントを見つけ出す必要があります。
いや、より正確にいえば、そういわれて初めて納得できるような、驚きを与えるようなセグメントを作り出していくことが大事なのでしょう。




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