「STPマーケティング」とは何か?…具体例から解説する

ビジネスの世界で顧客のニーズを意識しないサービスや商品は皆無ではないでしょうか。
もちろん、自分の作りたいものを作る芸術家なら別ですが、利益度外視の商品やサービスであっても長期的展望に立って利益を得ることを目的とするのがビジネスマンだからです。

顧客のニーズに目を向けたとき、マーケティングでは定番の考え方、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)という3つが登場することになります。

端的に言うと、どのように市場を分けるか?、誰に向けて売るか?、競合製品とどう区別するか?…
ということで、それぞれの頭文字を取ってSTPと呼ばれ、ビジネスの世界では「STPを決める」や「STPを考える」といった風に使われます。

もちろん、Sを決めて、次にTを決めて、最後にPを決めるという決まった順番があるわけではありません。
STPというひとまとめにされている通り、これらは同時並行的に決まっていくものなのです。




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STPマーケティングを具体例から解説する


では具体例として、その全体像をアイスクリームの新製品開発から考えてみましょう。
少し前の話になりますが、「パナップ」というアイスのリニューアルを例に取ります。

カップタイプですが長細い容器に入っていて、昔から売られている定番製品の一つです。
ご存知の方も多いでしょう。

さて、このパナップという製品は昔から売られていたのですが、2002年ごろ、面白いリニューアルが行われました。
その際、マーケティング担当者は、顧客のニーズに目を向けつつ、STPをいろいろと考えていました。

パナップという製品は、もともと老若男女を問わずたくさんの人々が存在している市場において、ファッション志向の若い女性をターゲットにして開発された製品でした。
それは30年以上前の話です。

長細い容器という一風変わったシルエット、食べる際にはやはり一風変わったロングスプーンが必要になるというパフェにも似たデザインが、おしゃれ好きな女性の感性にうまくマッチしたといいます。
30年余り継続的に販売を続けてきたことにより、製品の認知度はとても高いものでした。

しかし、ここに来て問題が見えてきていました。
それは、ターゲット層がずれてきたということです。

30年前にパナップを好んで買ってくれた人々は、パナップと同様に30年分歳をとってしまいました。
パナップとしては、ファッション志向の若い女性をターゲットにしたいところですが、より高級な新製品が次々に登場する近年の市場動向の中、なかなか思うようにターゲットの心をつかむこともできなくなっていたのです。

そこで人々のニーズを改めて調査した開発者は、次第に、次のような仮説を持つようになります。
顧客がパナップに求めているものがあるとすれば、それは、30年前ようなファッション性ではない…
むしろ、楽しさや、面白さ、アイスを食べながら友達と何気ない一時を過ごすことを求めているのではないか?…と。

考えてみれば、顧客にとってアイスは1つの手段になり得ます。
アイスを食ベるということ自体が目的ではないのかもしれません。
昔であれば、パナップを食べることを通じて、ファッショナブルな私というイメージを持ちたかったのかもしれません。

これに対して、現在では、友達との会話の材料として、話のタネとして、パナップは価値を持つのではないかと考えたわけです。
開発者は、このアイデアを「エンターテインメント性」と捉え、パナップに新たなポジショニングを与えることにしました。

その結果、パナップは、新しい製品として位置づけ直されることになります。
「スマイルパナップ」の登場です。

アイスに注入されるソースの注入口の形を少し変えることによって、スマイルマークに見えるようにしたのです。
しかも、それが一種の占いのように、ある確率で登場するようになっています。

それは、ただ興味を引くために行われているわけではありません。
友達と楽しく過ごしたいという顧客のニーズを汲み取り、彼らに話題を提供するエンターテインメント性を実現するために行われているのです。

新製品というよりは、小さなリニューアルです。
しかし、この小さなリニューアルによって、マーケティングの内容は大きく変わるはずです。

マーケティングに求められているのは、画期的な技術開発でもなければ、そうした技術に支えられた新製品開発でもありません。
マーケティングに求められているのは、その製品が顧客にどんな価値をもたらすのかということを顧客のニーズから徹底して考え直す思考なのです。

エンターテインメント性というポジションをとることによって、競合相手も変わり手…
ファッション性というポジションのときには競合していた相手が、直接的な競合ではなくなります。
そして、ポジションをとることで、新しい競合相手が見えてくるのです。

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