ビジネスの世界おいて「プロトタイプ」を開発する目的とは?

ビジネスの世界おいて「プロトタイプ」を開発することがあります。
さて、そもそも「プロトタイプ」を開発する目的や意味とはどのようなものがあるのでしょうか?

新しく製品を開発するにあたっては、アイデアやコンセプトが必要になります。
とはいえ、これらのアイデアやコンセプトは、具体的な形を伴っているわけではありません。

満員電車の圧力に耐えられる液晶ディスプレイを持ったノートパソコンは、アイデアやコンセプトの段階では頭の中で練り上げられた抽象的な存在です。
抽象的な存在に具体的な形を与えてみること、これがプロトタイプ(試作品)となります。

プロトタイプは、ちょっとした模型といったものから、本格的に実際の使用に耐えられるものまで様々あります。
では、なぜプロトタイプを作成する必要があるのでしょうか?

マーケター自身にとっても、それから説得相手となる他部署の人々にとっても、さらに顧客にとっても、それぞれに同じ意味があります。
同じ意味とは、具体的な形を伴うことで見えてくる現実があるということです。

満員電車の圧力に耐えられる液晶ディスプレイを作りたいという話を聞いて、確かにそれは必要だと考える顧客がいるかもしれません。
しかし、実際に製品が開発されてみると、考えていたパソコンと何かが違う…
自分の求めていたものではなかった…
というようなことがよく起こります。

プロトタイプの作成は、こうした問題に応えることができます。
マーケター自身、プロトタイブを作成することで、満員電車の圧力に耐えられる液晶ディスプレイを作るためには、イメージしていた以上にパソコンに「厚み」が必要だということに気づくかもしれません。

それは、薄型のスタイリッシュなノートパソコンとは少し違っているでしょう。
あるいは、耐久性向上のために重い素材を用いる必要があるかもしれません。
これもまた、軽量のノートパソコンとは違う形となるでしょう。

プロトタイプを作成することで見えてくるのは、「ベネフィットの束」としての製品の姿です。
何かの機能をつけ加えたり差し引いたりするということは、他の機能にも影響を与えることになります。

耐久性を向上させようとすれば、分厚くなり、重くなる…
高級な素材を用いるようにすれば、品質管理も難しくなるとともに、価格も高くなります。
アイデアやコンセプトという抽象物の際には見えにくかったこうした問題は、プロトタイプという実際のモノを作成してみることでよく見えるようになるのです。

プロトタイプの作成は、特にデザインの分野で重視されてきた経緯があるようです。
例えば、真四角の液晶テレビではなくて、少し丸みを帯びた優しい液晶テレビを作りたいという場合、アイデアやコンセプトとしてはこれで十分かもしれませんが、具体的な形という意味では不十分です。

少し丸みを帯びたとは、Rでいうとどのくらいの丸みになるのでしょうか?
その丸みは、素材そのものが持つ厚さによっても変わってきます。

あるいは、優しさを示したい液晶テレビでは、一般的なアルミや鉄といった素材を用いて良いのでしょうか?…
もっと優しさを示すことのできる素材があるかもしれません。

色はどうでしょうか?
一言で白や黒といっても、その実際の表現は無限にありそうです。
プロトタイプを作成するということは、こうした細かい問題にまで目を配ることにつながります。

それからもう一つ、プロトタイプを作成することで、顧客に試しに使ってみてもらうことができるという点も強調しておきたいと思います。
プロトタイプの質にもよりますが、ある程度しっかりとしたプロトタイプを作成することができれば、実際にそのプロトタイプを使ってみることで、その使い勝手を確かめてもらえるようになります。

その中で、満員電車の圧力に耐えられる液晶ディスプレイを持ったノートパソコンには、そもそも持ち歩くことができるように軽量化を行う必要や、長時間駆動できるバッテリが必要だということになるかもしれません。

顧客自身の必要が、ただ満員電車の圧力に耐えられることではなく、外出時に快適にパソコンを利用できることにあったということが改めて見えてくることもあるでしょう。
こうした情報を取り込むことで、より価値のある製品を提供することができるようになります。

プロトタイプの作成は、主に物理的な形を伴った製品にあてはまる開発プロセスであり、消費者調査の手法でもあります。
とはいえ、サービス財においても、模擬的な状況を作り出すことで、プロトタイプと同様の成果を得ることは可能です。

また、ソフトウェアなどの場合には、製品よりも先進的な形で、いわゆるβ版の提供によってプロトタイプが実現されています。
この場合には、β版の利用を通じて顧客から積極的に情報を得ることによって、最終製品に向けて改良が行われることになります。

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