ドラッカーの「ポスト資本主義社会」を要約してみると…

ドラッカー(ピーター・ファーディナンド・ドラッカー:Peter Ferdinand Drucker)は、ビジネス界に最も影響力をもつ思想家と言えるでしょう。
多数の著書はいずれも世界中でベストセラーを記録し、90歳を超えても、大学で教鞭を執るかたわら、巨大企業、各国の政府、政府機関、地方自治体、NPOのコンサルティングを行っていました。

その研究領域は経営、経済、社会全体と広範に及びます。
日本では経営学者のイメージも強いが、本人は自らを社会生態学者と称していました。

ドラッカーの影響力の大きさは、「ナレッジ・マネジメント」や「コア・コンピタンス」など、近年、脚光を浴びているマネジメントの理念、概念の多くが、そもそもドラッカーを出発点としていることからも明らかでしょう。

さらに、東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化などにもいち早く注目し、独創的な知見を述べてきました。
1969年の著書「断絶の時代」では、それ以降の変化を見事に予言してみせました(イギリスのサッチャー首相は同書をもとに「民営化」を推進し、その影響は世界中に広がりました)。

企業家の時代、グローバル化の時代、多元化の時代、知識の時代…
その見方をさらに発展させたのが1993年に出版された「ポスト資本主義社会」です。

ここでは、まず、現在が大きな歴史の転換期にあたることを指摘していました。
世界は数百年に一度の大きな転換のまっただなかにあり、政治・経済・社会など、あらゆる領域で構造変化が起こっている、と。

そして、この変化はいったいどういうものなのか…
そしてやがてまったく新しく生まれ変わる世界とはどんなものなのか…
多角的な検討を重ねて予測しています。

この転換期は、資本主義社会から「知識社会」への移行期にあたる、とドラッカーはいいます。
それが「資本主義社会後=ポスト資本主義社会」なのです。

すでに基礎的な経済資源は、資本でも天然資源でも労働力でもなくなりつつあります。
それはなにかというと「知識」です。

ドラッカーのいう「知識」とは、成果を生むための高度に専門化された知識、行動のための知識、客観的で伝達可能な体系化された専門知識のことです。
高度化して専門化した知識は、他の知識と連携して結合したときに、飛躍的な力を持つことになります。

そこで、知識を有機的に連携、結合させる場として、組織が大きなポイントになってくるのです。
知識が中心となる社会は、組織の社会となっていくでしょう。
その組織は知識をベースにしたものだから、従来の資本主義社会における組織のようなものではなく、より柔軟な形態をもつ組織となります。

数十年後に来るべき「知識社会」では、もはや経済が社会を規定しない…
経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変えるのだといいます。
その遙か彼方の社会を見通すドラッカーの目には、まさに急激に変化しつつある社会(経済ではなく社会)の姿がはっきりと映っていたのででしょう。




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