組織が複雑化すれば会社は衰退していく?!(パーキンソン第4法則)

イギリスの歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱したパーキンソン第4法則では、「組織が膨張すれば複雑さをもたらし、複雑さは衰退をもたらす」(または「立派な自社ビルの建築が、その企業の崩壊点になる」)と、大変含蓄(がんちく)に富んでいます。

パーキンソン氏は歴史の研究中に、自分が興味を持った代表的建造物が、どの時代にどんな目的で作られたかを丹念(たんねん)に調べていくうちに、この法則を導き出しました。
彼は、企業などが建物を建造する計画を立てると、そこから崩壊の兆しが見えることを発見したのです。

組織や企業は、成長や発展が続いている間は、みんな目の前のことで精一杯で、資金、人員、時間などの面でも、立派な本社ビルを作っている余裕はないはずです。
それが可能になるのは、むしろ重要なプロジェクトが終わってからです。
つまり、パーキンソン氏は、ビルの完成が企業の終息であり、終息はその死を意味するというのです。

その好例として、彼はスイスのジュネーブ市にある国際連盟の「諸国民の殿堂」(現在はILO・国際労働機関の本部として使用)を挙げています。
同所は、第一次世界大戦で1500万人の死者を出した反省から、平和を願い1920年に発足した国際連盟のために、大きな期待を込めて建てられました。

その後、1933年に連盟は実質的に行き詰まってしまいますが、工事は続行され、1937年に完成したのです。
その建物は誰もが驚くほど立派で、事務局、長官室、委員室からカフェテリアに至るまで豪華そのものでした。
ところが、その宮殿が正式にオープンした時、国際連盟は有名無実の状態に陥っていたのです。

同様にわが国でも、そのような事例が多く見られます。
たとえば、バブル景気に浮かれている時に建造され、その後、倒産した旧長銀の本店や大和生命のビルなどが良い例でしょう。

好調な企業業績の波に乗って、大金を投じて自社ビルを建設した途端、業績が悪化し破綻した企業が数限りなくあります。
もちろん、立派な自社ビルを建てて、繁栄する企業もあるでしょうが、彼の言が当を得ている実例が多いのです。




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さらにパーキンソン氏が、企業における衰退例として挙げるのは給料だと語っています。
その企業が、規定や年功序列などの決まりきった基準に、給与査定の重点を置いているなら、衰退の始まりだとしているのです。

あるいは会社のある部署を訪れて、その社員に「経営者がここを訪れたのはいつですか?」と尋ね、答えが「昨年です」なら経営状態は悪く、もし「一度もありません」であれば、企業の状態は絶望的だとしています。
さらにパーキンソン氏は、複雑さが衰退をもたらすことに関連して、いみじくも「複雑さは、官僚的な役員や上司を説得できる」と冷笑的に述べているのです。

例えば、会社が拡大して上司が昇進すると、彼らが真っ先に組織の改変に取り掛かることがあります…
無駄を省いて簡素化したり、特定の有望分野を拡充するのかと期待すると、そうでなく、単に従来の組織を表向きだけ編成替えするのです。
たとえば、部課数を増やして名称を変え、部長や課長職の数も増やすのだが、仕事の内容は実質的に以前と何ら変わりません。

組織を変えて、上層部に何か実績を上げているかのような印象を与えようとしているのですが、驚いたことに、それを評価する経営者や指導者が意外と多かったりするのです。
彼らは、新任の部下がその分野に精通していると信頼しているのか、あるいは自分たちも同様の道を進んできたからなのかもしれません。

さらに組織を改変したり、増やす際によく見られるのは、やたらとその名称を変え、カタカナ英語にすること…
たとえば「本部」を「カンパニー」に、その下の「部」を「グループ」に変え、さらに「課」を「チーム」や「ユニット」にします。

役職名もカタカナ化し、一般に部長を「マネジャー」に変え、さらにその上位を表す場合は、「シニア・マネジャー」や「ゼネラル・マネジャー」の名称をつけます。
また、その下位を表すには、「アシスタント」や「サブ」などの名称を付すのです。

これらは、肩書きの名称を変えてはいるものの、それ以前の仕事の内容と、実質的にほとんど変わっていないことが多いのです。
組織変更をして、何が斬新な手を打っているかのような印象を与えるのが狙いなのです。
この第4の法則は、物事の見かけに囚われずに、その本質や実態を見抜くことの重要性を教えてくれます。




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