ビジネマンが知るべき「マーケティングの思考法」について

目次

「マーケティング」とは、企業などの組織が行うあらゆる活動のうちで、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念を指します。

その中でも今回は「マーケティングの思考法」についてご紹介していきたいと思います。




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ディメンジョンで考える


➀経営のディメンジョン
「ディメンジョン」とは次元という意味です。
経営やマーケティングの世界で「考える」ということは、抽象と具象のレベルを自在に行き来することです。

例えば、規範~戦略~管理~業務~作業と抽象レベルを分けたとして、ユニークさという規範は業界常識とは異なる戦略を導きます。
そしてその独特の戦略は、やはり同業他社とは異なった業務の実践となるのです。

この際に戦略の次元で考えるのか、それとも業務の次元で考えるのかの抽象の水準のことを「ディメンジョン」といいます。
ディメンジョンはそれぞれのレベルで勝手に「考える」わけにはいきません。
最上レベルの規範は別として、すべてのディメンジョンは一段上のディメンジョンの意図に従って考えるのです。

➁マーケティングのディメンジョン
マーケティングは経営の一部ですから、経営のディメンジョンによって方向や範囲を導かれます。
経営全体のビジョンが、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のように「当社は“痛みと病気を軽くするために”存在している」あるいはボーイングのように「航空技術の最先端に位置する」と製品や技術、顧客に提供する価値を宣言している場合には、製品やサービス開発はそちらの方向に導かれます。

あるいはディズニーの「皮肉な考え方は禁ずる」や、3Mの「イノベーション-新製品のアイデアを殺すな」といった考え方、態度がビジョンに示されていれば、製品開発にもプロモーションにも創造性や革新性を強く意識しなければなりません。

一方、P&Gの「優れた製品を提供する」やソニーの「開拓者たれ。他に追随せず、人の知らない仕事に取り組む」といった目的や目標を表明したビジョンを掲げていれば、マーケティングにも卓越性や異質さが求められます。

次にマーケティングそのもののディメンジョンがあります。
マーケティングのビジョンには、対象とする中心市場、顧客や提供する製品・サービスの特徴や条件などが示されます。
既にこうしたことが経営ビジョンによって明らかにされている場合には、改めてマーケティング・ビジョンを掲げる必要はありません。

ビジョンに従ってマーケティングの戦略が導かれます。
マーケテイング戦略とはビジョンに沿って、どの市場で、どの製品によってどのような競争優位性を築き、独自価値を実現していくのかを明らかにすることです。

この戦略に従って行われるのが「マーケティング・マネジメント」です。
このディメンジョンで登場するのが4Pです。
プロダクト(製品開発)、プライス(価格政策)、プロモーション、プレイス(チャネル政策)を検討するのです。

マーケティング・マネジメントの一段下で、色々な部門や担当者が業務を行います。
多くの業務と同様、マーケティング業務も一部門、一担当者が単独で行うのではなく、いくつもの部門や担当者が横断的に連携、協力して行います。

そうした部門横断や機能交差(クロス・ファンクショナル)のことをプロセスといいます。
業務プロセスには次の3つがあります。
〇製品・サービスの企画·設計・開発プロセス
〇部品・原材料の調達から生産・販売・アフターサービスのプロセス
〇顧客とのコミュニケーションを中心とする関係プロセス




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クライテリアで考える



➀クライテリアとは?
ディメンジョンがシステムの次元を意味するのに対して、システムの構成要素のことをクライテリアといいます。
構成要素とはものの見方ですから、これといった決まりがあるわけではありません。

経済学では資源を土地・労働・資本、機能を生産・流通・消費などとしてきました。
経済セクターを政府支出、民間投資、消費と分けるのも同様です。
経営の世界ではヒト・モノ・カネなどといいます。

システムをどう見る、何と見るかによってクライテリアは変わってきます。
鉄道事業を生産志向で見れば、線路・列車・駅が重要な要素になりますが、顧客志向で輸送という価値提供をしているのだと考えれば、スピード・便利さ・快適さが重要要素になります。

ハンバーガーショップと考えれば、メニュー、調理法、店内レイアウトが焦点化されますが、ファースト・フードならマクドナルドのようにスピード、清潔さ、親切さに焦点化されるでしょう。

マーケティングの企画や検討をする際にディメンジョンとクライテリアの考え方を知らないと、思考が混乱してしまいます。
限定された知的な大人層を狙った戦略なのに、若者狙いのナンセンスCMを子ども対象番組で流すというようなちぐはぐなことになってしまうのは、戦略次元と業務次元の間の統一性を考慮していないためなのです。

➁3C
またクライテリアを知らないとマーケティングの検討そのものができません。
売れ行き不調の原因を検討しているのに、「商品の名前が悪い」、「パッケージ·デザインが良くない」、「時期が悪かった」などと思いつ
きの言いたい放題では、問題は明らかにできません。

マーケティングを戦略レベルで検討するためのクライテリアに「3C」があります。
チェンジ(変化)、カスタマー(顧客)、コンペティション(競合)の頭文字をとったもので、ハートレーという経営学者が考え出したものです。

チェンジではなくカンパニー(自社)に代えて、やはり3Cと呼んでいるものも見かけます。
ハートレーの3Cの場合には、すべてを外部要素で統一してあるので、外部要因を3つの観点から整理し、検討するのに便利です。




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➂4P
次に管理のレベルでマーケティングを検討する際に用いられるのが有名な「4P」です。
その後、4Pは売り手であるメーカー側から見た「売るための」ものであり、顧客の側から見るべきであるということから4Cが提唱されました。
実際の検討には4Cを用いた方が、顧客視点から外れないようです。

4Pは管理のディメンジョンですから、一段階下の業務のディメンジョンでは4Pそれぞれがより細分化された構成要素に分解されます。
ここで特にプロダクトを、カスタマー・ソリューションの面から、顧客のどのような問題を解決するものと位置づけるかによってクライテリアは違ってきます。

先の例のように製品を鉄道と位置づければ列車・線路・駅がクライテリアとなり、輸送と考えればスピード・便利さ・快適さというクライテ
リアになるわけです。
トラック配送会社が自社を物流業と考えれば、輸送・荷役・保管がクライテリアになりますが、宅配サービス業と位置づければ、日時指定、クール(冷凍・冷蔵)、親切さがクライテリアとなるのです。

プロダクト以外の3つのPのクライテリアはプロダクト・コンセプトから導かれます。
基本的には、価格は原価・売価・数量、プロモーションは広告・人的販売・販売促進・パブリシティ、プレイスは店舗・品揃え・サービスタイプ・立地がクライテリアになるでしょう。

4Pはマーケティングの大原則なのですが、それぞれの内容は時の流れで変わってきます。
流通チャネルが未整備なときには新製品開発よりもチャネル構築が優先されるべきですし、チャネルが陳腐化して販売能力を低下させていれば、広告をいくらやっても効果はありません。
また製品もチャネルも広告媒体も時代の変化によって絶えず新旧交替をしています。

➃BOC分析
そこでこの4Pも過去・現在・未来で重点を変えていかなければなりません。
そのための手法をBOC分析といいます。

例えば過去には市場リーダーのトップ・ブランドが安定的なシェアを持っており、そのリーダーのチャネル力と広告力が圧倒的な支配力を持っていたとします。
ところが当時のチャネルは往時の勢いを失い、シェアの高さによる価格競争力も次第に低下してきたとします。

そこで市場には新たな製品・ブランドの成功可能性が高まり、チャネルは新旧交替し、新しい消費者は華麗な広告キャンペーンを待望しているというように変化すれば、4Pのウェイトが変わってくるわけです。

製品は流行、トレンド、新技術などで変化しますし、新チャネルは絶えず生まれてくるし、メディアは多様化し続けています。
貨幣価値、平均所得、就労形態の変化は価格に影響します。
それに伴ってマーケティング・ミックスの4Pも変化しているのです。

➄ドメイン分析
4Pはわかりやすく使いやすいクライテリアなのですが、弱点もあります。
顧客セグメントが含まれていないために、ターゲットによる違いが考慮されなくなってしまい勝ちなのです。

マーケティングでは、いつもターゲットとそのニーズを見据えて考え、議論しなければなりません。
そうした検討に役立つのがドメイン分析です。
ドメインとは領域とか分野という意味ですが、これはターゲット・ニーズ・ノウハウというクライテリアです。

4Pではターゲットやニーズの違いを掘り下げることができませんが、ドメイン分析だと具体的な要件の比較や検討を行うことができます。
製品や事業による違い、自社と競合他社との違い、製品コンセプトによる違いなどを相対化して、どのようなマーケティングが効果的なのかを深く考えることができるのです。

➅ビジネス財・サービス財について
ここまで述べてきたのは、主に消費者向けマーケティングの場合です。
ビジネス・マーケティング(B2B)の場合でも、基本は共通しています。

ただし、ビジネス・マーケティングでは製品 のQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)で成否が左右され、プロモーションでは人的販売の巧拙ですべてが決定されてしまいます。
大口ユーザーとの直取引では流通チャネルがありません。
したがって4Pのすべてを検討するということはあまりありません。

それよりもドメイン分析のノウハウ領域でQCD対応や人的販売方法の詳細を検討することが有効です。
サービス・マーケティングの場合には、無形であり即時財(サービスの提供がそのまま消費や使用となる)なので、原則としてチャネルがありません。

そして製品の企画開発をするということではなく、サービスとして前線の現場で実現する仕方をデザインすることになります。
有形製品のマーケティングは製品のプランニングに重点が置かれるのに対して、サービス・マーケティングではプランニングだけではなく、実際のサービス提供システムの維持運営が重要になるのです。

消費財の場合にも製品分野は多岐にわたり、それぞれの業界によってマーケティングは随分異なります。
大々的なテレビCMが常識化している自動車や家電製品の業界もあれば、スーパーマーケットの店頭ディスプレイが鍵となる日用雑貨や食品の業界もあります。
しかし消費財のマーケティングは、購入者が消費者であり、ニーズが生活上に限定されます。

それに対してビジネス財は、顧客は大企業から小規模まで、さらに行政組織、各種団体、病院、学校などと多彩です。
購入ニーズも、事務所の掃除用品から、生産する製品に組み込まれる装置や部品まで色々です。
中には小さな事務所で使う雑貨のように、ほとんど消費財と同じように購入されるものもあります。

サービスは消費者対象の場合もあるし、企業や組織向けのこともあります。
同じレストランでも、家族で利用することもあるし、会社のイベントで利用することもあるかもしれません。

社用や接待となると、顧客ニーズは接待する側とされる側では微妙に異なります。
このようにビジネス財やサービスのマーケティングはあまりに多岐・多様にわたるものなのです。




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