本当に必要な「サービスマーケティング」とは何か?

目次

「マーケティング」とは、商品が大量かつ効率的に売れるように、市場調査や製造、輸送や販売・宣伝などの全過程にわたって行う企業活動の総称のことです。

他にも市場活動や販売戦略などとも呼ばれたりしますが、ここではそんなマーケティングの中でも「サービスマーケティング」についてお話したいと思います。




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サービスの特性



サービスマーケティングには、特別に有形製品のマーケティングと異なったところはありません。
確かにサービスには無形性、変動性、即時性、需要の変動性といった特徴があります。
最後の需要の変動性を別としても、すべての特性は製品という具体的実態がない分、工夫が必要になるということを意味しています。

サービスのマーケティングで特に重視しなければならないのは、効果的な口コミの仕掛けです。
サービスの評価は、そのサービスを受けた、味わったという経験を根拠にしますから、その経験をデザインするということと、その経験談をどのように人に語ってもらうかが極めて重要になります。

有形製品の場合には、製品そのものの実態を見ることができますから、特に経験がなくても良さは伝わってきます。
しかし、サービスはしゃれたディスプレイで見せることができないし、無形なものを映像化してコマーシャルで見てもらうこともできません。


経験デザイン



サービスはホテルのロビー、レストランのテーブル、テーマパークのショーや遊具などのフロント・ステージで提供されます。
サービスは生産と消費が同時ですから、消費者はそこでサービスを体験します。
この場が経験の場であり、その経験をデザインすることが「サービスマーケティング」の基本となります。

有形製品の購入から使用プロセスまでのすべてが、サービスではフロント・ステージでの提供・経験なのです。
そこには物理的環境があり、顧客にサービスが提供されます。

その環境とサービスの全体を経験者は口コミに乗せてくれるのです。
物理的環境は景色、室内装飾、庭園、什器、食器、衣裳、BGM、スタッフの表情や態度などの総体です。

フロント・ステージという言葉から連想できるように、サービスの経験空間は一種の舞台と考えられます。
その舞台で顧客はスタッフと一緒になってショーを見たり、参加したりするのです。

経験デザインという考え方の良いところは、顧客がサービスを主体的に経験すると考えるところにあります。
受身でサービスを受けるというのではなく、顧客も一種のショーに参加しているものと考えるのです。

フロント・ステージに対してバック・ステージがあります。
バック・ステージでは、経験をデザインし、舞台を整え、ショーの脚本を書き、演出を行うのです。
フロント・ステージがサービスの業務と顧客リレーションを担当するのに対して、バック・ステージでは企画・演出を担います。




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利用前マーケティング



フロント・ステージでは、実際のサービス提供場面の演出だけでなく、利用前と利用後の顧客行動を誘導しなければなりません。
利用前というのはいうまでもなく、ブランドの認知とコンセプトの訴求です。

ディズニー、フェデラル·エクスプレス、サウスウエスト航空、ノードローム、リッツ・カールトン、スターバックス、マクドナルドなど、いずれもコンセプトやポジションニングが極めて鮮明で、わかりやすいことが共通しています。
どういうことがそれぞれの価値なのか、誰にでもわかるのです。

日本旅館やビジネスホテルなどのパンフレットやポスターを見ると、全く違う場所なのに写真もコピーも似たり寄ったりのものがほとんどで
す。
コンセプトもUSPもないのです。

もうひとつ気になるのは、こういうパンフレット類を制作する時の姿勢です。
パンフレットにこだわりがない、主張がないということは、おそらくサービスもありきたりのものではないかと容易に想像できてしまいます。

レジャーや旅行の際には、当日までにあれこれ準備をすることも楽しみのひとつです。
パンフレットはその楽しみを増幅するための意味もあるのです。

何度か行ったことがあり、ホテルの人と面識があれば、事前に連絡をとって問い合わせや打ち合わせをすること、周辺の様子などを聞くことも楽しみのひとつです。

そういうことが効果的ならば、初めてのお客様に対しても、同じような親しげな事前対応を演出するべきなのです。
問い合わせに事務的に対応して、家族旅行なのに人数分のパンフレットを機械的に入れたDMが届くというのでは、マーケティング不在と言われても仕方ありません。

特に独特の料理、特別の施設、時期限定の催しなどの試用機会は事前にできる限り創出します。
口コミのための演出は利用前から必要なのです。


利用時マーケティング



実際に来店、来場されている時は顧客満足体験の機会です。
ファミリーエンターテイメントを価値とするディズニーランドでは、接客要員をキャストと呼んでいます。

お客様はゲストでディズニーランドという巨大なステージを経験しているわけで、接客要員もショーの出演者であり、一部を構成しているのです。
キャストの役割はディズニーランドから帰った後で、「楽しかったねえ」と語り合える思い出をつくるのがミッションですから、どうにかして素敵な思い出をつくろうと努力します。

これをコンセプトの徹底といいます。
サービス業ではこうしたこともマーケティングに含まれます。

どのような顧客満足を経験していただくか、はコンセプトがなければつくれません。
コンセプトがないと、接客要員に幹部が「心のこもったおもてなしをしてください」などと精神論を説くだけになってしまいます。

具体的にこうした体験をしていただこう、こういうインパクトのあるもてなしをしようなどと、鮮明にされたものがコンセプトです。
もちろん、そういうものは顧客の価値観に合ったものでなければなりません。

女将の日本舞踊を見せてくれる日本旅館がありますが、泊り客がしらけて見ていました。
あるいは夏にロビーで盆踊りをしている旅館もありました。

だらだらとやっているためか一向に盛り上がっていませんでした。
ひとりよがりではなく、本当にお客様に喜んでいただくことを考えることが大切なのです。


利用後マーケティング



一昔前の日本旅館業界では、利用客に後から女将が手紙を書いて送るというのが流行っていました。
銀座のクラブでも似たようなことをやっています。

利用後マーケティングの目的はブランドの確立と口コミをしてもらうことにあります。
女将の手紙も結構ですが、楽しかった経験を思い出していただくことを意図します。

多くのサービス業は関係志向のビジネス・マーケティングと同じようにリレーションシップが大切です。
特に利用直後は記憶が鮮明ですから、次期の企画・シーズン・プロモーションなどをじっくり見てくれるチャンスでもあります。
サービス・マーケティングのポイントはブランドの確立、経験デザイン、そして口コミ促進なのです。




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