「値下げ」と「ポイント発行」はどちらが効果的なのか?

マーケティングでは、価格をコントロールすることはとても重要な問題です。
逆に、価格決定権を相手にとられてしまうようなことがあれば、企業としての存続が危うくなるでしょう。

その一方で、価格は、一般的にコントロールできないものだとも考えられています。
例えば、リンゴを100円で売る商人がいれば、隣の商人は、自分のリンゴを売るために100円よりも安い価格で販売しようとするでしょう。
当然、それを見たまた隣の商人は、さらに安い価格をつけて販売するはずです。

この競争は、リンゴを売ってもまったく利益が出ない価格になるまで続き、やがて、誰もがその最も低い価格でリンゴを販売することになります。
経済学の議論で出発点となる完全競争という考え方です。

このとき、リンゴの価格をコントロールすることは誰にもできません。
誰にもできない代わりに、競争という便利なメカニズムによって、価格は自動的に決定されることになります。

世の中には完全競争に近い市場もあれば、逆に、まったく完全競争ではない市場、すなわち独占的に製品やサービスが提供されている市場もあります。

完全競争に近い市場の具体例は難しいのですが、産業革命期の生産活動や、農作物などにはある程度あてはまるかもしれません。
おそらく、完全競争という考え方が成立した時代は、現実にも完全競争に似た状況がたくさん起こっていたものと思われます。

今の時代は、多くの市場は不完全競争の中で動いています。
それも、独占市場であることは稀であるにしても、数社の大企業が市場シェアのほとんどを占有している寡占市場となっています。

例えば、日本におけるビール業界を考えてみましょう。
おそらく頭に思い浮かべることができる数社の企業が市場シェアのほとんどを占めているはずです。

あるいは、ゲーム機市場でも同じことです。
市場は2社か3社の寡占状態にあります。
こういった市場だからこそ、価格をうまくコントロールすることが、優れたマーケティングの条件ともなってくるのです。

価格のコントロールは、単純に値付けをどうするのかという問題に留まるものではありません。
価格は、販売促進のツールにもなります。

例えば、多くの家電量販店が採用しているポイント制度を考えてみましょう。
1万円の家電製品を購入したときに10%のポイント還元が行われ、そのポイントは次回の家電製品購入の際に利用できます。
この場合には、価格の設定は、名目的な表示価格と、実際の購買時点での価格に違いがあることになります。




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ポイント制を導入するメリットとは何か?


なぜ、ポイント制度という複雑な手法を用いる必要があるのでしょうか。
そこには、価格に関係して様々な効果が期待されています。

まず、名目的な表示価格を残すことによって、割引というお買い得感を顧客に提示することができます。
最初から価格を低く設定することは、先に述べた価格を通じた価値の推定という心理メカニズムによって、マイナスの影響が出かねません。

また、次回の購入に割引が適用されることによって、顧客の囲い込みを行うことができます。
1度その店舗で製品を購入した顧客は、ポイント制度の存在によって、他の店舗で製品を購入しにくくなるわけです。

それからさらに、ポイント制度を導入することで、販促活動の幅が広がることになります。
売上が思うように上がらないとき、直接的に価格を下げたり上げたりすることはリスクを伴います。
特に、価格を下げたのに売上が上がらなかったという場合、そこから改めて価格を上げることは困難でしょう。

こうしたときに、ポイント制度が導入されていれば、ポイントの還元率を調整することによって販売促進を行うことができます。
完全競争ではない市場であれば、このように価格を通じて様々な効果を期待することができます。

言うまでもなく、マーケティング活動の多くはコストとしての側面も持っています。
やればやるほどお金がかかるわけです。
ポイント制度にしてもそれは変わりません。

完全競争に向かう市場では、マーケティング活動の原資がそもそもないため、何も手を打つことはできません。
完全競争から離脱すればするほど、マーケティング活動の重要性が増していくことになります。

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