働き盛りのビジネスマンの中には、要介護のご両親がいる人も多いでしょう。
もし、そんなあなたに転勤の話がきたら…
ご両親を理由に断ることができるのでしょうか?
例えば妻と共に共働きをしていた折、突然、地方への転勤命令が下ります…
今の家には要介護の両親がいて、両親を地方に連れて行くわけにはいかない…
といった事例です。
実は、転勤を拒否できるかどうかの判断基準は、➀その転勤の業務上の必要性、➁人選の合理性、➂転勤によって社員の受ける生活上の不利益、➃転勤後の労働条件の低下…
といった各条件を総合的に検討して判断されます。
その判断基準について、それぞれ、順を追つて見ていきましょう。
➀転勤の業務上の必要性について
ここでいう「業務上の必要性」とは、定期異動、合理化、教育目的、職場の和を守るためなど、その理由は広範囲に認められます。
一般的には、よほどのことがない限り必要性は認められます。
そして、会社は業務上の必要に応じ、社員の勤務場所を決定することができるのです。
ただし、たとえば、社長の娘と社員が親しくなりすぎたからとか、社員の土地を会社に売却しないからという業務とまったく関係ない動機や目的による転勤は禁止されています。
➁人選の合理性(不当な動機、目的による転勤の禁止)について
退職勧奨拒否や経営者への批判に対する嫌がらせ、報復的人事など、転勤の必要性があってもその対象者の人選に合理性がなければ、転勤命令は会社の権利濫用(その権利の本来の目的、範囲等をはずれて用いること)で無効となります。
この件でよく引き合いに出されるのが、労働組合活動に打撃を与えるための転勤です。
これは不当労働行為に該当し、無効になります(労働組合法)。
その他にも男女、思想、信条、その他、差別的な取扱いとなるものも男女雇用機会均等法、労働基準法、民法等の規定により無効とされます。
➂生活上の不利益について
裁判例では、単身赴任、共働き夫婦の別居や家の新築などは、通常予想される私生活上の不利益とされ、転勤拒否理由とはなりません。
辛いことですが、社員として我慢すべきものであるとしています。
ただし、重病の家族をかかえており、転勤により家庭崩壊、労働者家族の生命、身体の危険にかかわる場合などは正当な拒否理由となります。
➃転勤後の労働条件の低下について
これは普段の生活に影響を及ぼすほどの減収や、労働条件が著しく悪化する場合は、転勤の拒否理由となります。
このようにして見ますと上述した事例については、「生活上の不利益」に該当する可能性が高くなります。
会社に事情を説明して再検討してもらう余地は十分にあるのです。
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