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2016年3月に行われた政府が有識者に意見を聴く「国際金融経済分析会合」…
その会合に招かれたジョセフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞者・コロンビア大教授)は、安倍首相を始め与党が思案している消費税の増税に関して「“炭素税”を導入すべきだ」と提言をしました。
“炭素税(たんそぜい)”…?
あまり聞きなれない言葉かも知れませんが、実はこれからの日本にも導入されるかも知れない新たな課税制度なのです。
デキるビジネスマンであれば、この“炭素税”が如何なるものなのか?
そして日本に“炭素税”が導入された時に得する人や損する人は誰なのか?
しっかりと抑えておきましょう。
炭素税とは?
まず一番重要な「炭素税って何?」という話からです。
炭素税とは文字通り「炭素を含む化石燃料に課せられる税金」の事です。
ここでいう化石燃料とは石炭だけでなく、石油や天然ガスを始めとして、近年話題になっているメタンハイドレートやシェールガスなども当てはまります。
この化石燃料には生物が自らの体内に蓄えた昔の炭素化合物が含まれており、私たちはこれらの化石燃料を精製してガソリンや軽油、灯油などとして利用しているのです。
そしてジョセフ・スティグリッツが提案したのが、環境税の一種でもあるこの炭素税だったのです。
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日本の炭素税導入に関するこれまで
結論から言えば、環境省を始めとして国家全体で炭素税(環境税)を推進すれば、日本に導入される可能性もあると考えられます。
と言うのも炭素税ではありませんが、実は日本でも以前から同じような税制として、石油石炭税法に基づく「石油石炭税法」や、ガソリン小売価格に直接影響する「地球温暖化対策のための税」(地球温暖化対策税もしくは温対税)が存在しているからです。
つまり国内の化石燃料に携わる企業は、既に何らかの形で炭素税(環境税)を納めているのです。
この2つの税制と炭素税の大きな違いは、石油石炭税法や温対税が原油や輸入石油製品、石炭などの化石燃料に課税されるのに対し、炭素税は化石燃料の“炭素含有量”に応じて課されるものとなります。
つまり炭素税が導入された場合、企業は元々あった石油石炭税法に上乗せされる温対税に加えて、さらに炭素税を払わなければならない事になるのです。
そのため経団連や日本商工会議所など産業界・経済界から多くの反対があり、これまで見送られてきました。
顔には環境省が2004年・2005年と「炭素の排出1トンに付き2400円の環境税(炭素税)を2007年に導入する」などの提案していましたが、産業界の強い反対や環境税の効果を明確に示すことができなかった等を理由に見送られていたのです。
炭素税は日本に導入される可能性
2004年・2005年の環境省の提案以降、炭素税に関いて大きな提案や議論が交わされる事も少なかったのですが、今回の増税議論やジョセフ・スティグリッツ教授の提案、また中国などの大気汚染を背景に日本国民が徐々に環境に対して意識が高まってきている事も事実です。
また、環境省では今回の有識者会議での提言を受け、再び炭素税の導入に向けた検討を始めています。
特に2004年・2005年に根拠が乏しいとされた炭素税の効果や経済に与える影響などを、欧州など炭素税先進国(フィンランドやイギリスなど)から調査・分析するとしているのです。
しかも今回の炭素税に関しては、既存の温対税よりもさらに大きな税収を想定した「大型炭素税」を検討し、その税収を社会保障や法人税減税にも割り当てる事など幅広い提案を行おうとしているのです。
また環境省だけでなく、財務省も日本が「ガソリン1リットルの価格に対する税負担率」が47.1%と、33カ国のOECD(経済協力開発機構)の国の中で28位と低い事もあり、中長期の負担増の方向性を否定しない事も背景にあるのです。
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まとめ
炭素税や大型炭素税が果たしてどこまで日本で実現・導入されるかは、炭素税先進国の実績や環境省の提案、そして産業界や経済界とどこまで折り合いがつくかで決まって来るでしょう。
そして、もし大型炭素税が決まればCO2排出の軽減や環境問題に関する意識の向上、さらには社会保障や中小企業の法人税軽減にもつながり、化石燃料に関わるビジネスマンだけでなく、実は全てに人に関わる大切な話なのです。
ひょっとするとあなたの生活を炭素税が支えてくれる日が来るかも知れないのです。
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