人々をタイプ分けするセグメンテーションが無事に終われば、ターゲティングも決まったも同然のはずです。
実際には、セグメンテーションとターゲティングは同時並行的に進むでしょう。
市場の状況を見ながら、どの顧客をターゲットにすればよいのかを考え、ターゲットとなる顧客を念頭に置きながら、他にどういった可能性があるのかを考えるはずだからです。
特に、これまで考えられていなかった画期的なセグメントの切り口が見つかれば、それ自体がはっきりとターゲットになるはずです。
残るは、ポジションをはっきりとさせることです。
実のところをいえば、ターゲットとなるセグメントがはっきりと決まっているのならば、ポジションもまた決まってくるでしょう。
なぜならば、ターゲットが決まっているということは、すでに顧客のニーズがはっきりとわかっているということであって、後は、このニーズに応えることができるポジションをとればいいからです。
もし、ポジションをとることが難しいとすれば、それは、顧客のニーズがはっきりと見えていないか、セグメントやターゲットが決まっていないからに他なりません。
しばしば、ポジショニングは差別化のことであると考えられています。
確かに、その側面はあるでしょう。
ポジションをとることによって、競合が見えてくるとともに、彼らとの違いを考える必要が生じるからです。
例えば、富裕層向けの高級車を開発するという場合、同様のターゲットを想定している自動車は他にもたくさんあるでしょう。
この競合の中で、自社の自動車が一番優れているのだと主張できるポイントがあるかどうか、ポジショニングでは重要なことになります。
ただし、ポジショニングがすなわち差別化というわけではありません。
まずは、顧客のニーズに応えられるようにするということが、何よりも大事なポジションです。
顧客の心の中に製品やサービスを明確に位置づける…
その具体的な実現にあたって、差別化を考えることになります。
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では、顧客のニーズに応えるポジショニングとはどのように考えれば見つけることができるのでしょうか?
かつて、アサヒビールは「スーパードライ」を発売して大ヒットとなりました。
そこには、優れたポジショニングを見てとることができます。
そもそも、当時のアサヒビールは、競合に押されて劣勢にありました。
その中で、起死回生を目指した活動として、1986年に「アサヒ生ビール」の大幅リニューアルが行われます。
リニューアルに際して大規模な消費者調査が実施され、ビールの味の評価として「キレ」と「コク」という2つの言葉が発見されたのでした。
「コク」は苦みを意味しており、当時のビール開発の主流の評価軸でした。
しかし、アサヒビールは、調査の結果、特に若い人々を中心にして、「コク」はもとより、のどごしの良さといった「キレ」が求められていることに気づいたのです。
そこから「コク」と「キレ」の両立を目指した新しい味が開発され、好評価を得ます。
「キレ」という評価軸は、それまでのビールではあまり認識されていませんでした。
新しい評価軸の提案と実現、アサヒビールは、市場に受け入れられるために重要な活動をここで理解することになります。
そして、続いて投入されることになったのがスーパードライでした。
スーパードライは、キレを強化しつつ、新たに「辛口」という評価軸を前面に打ち出しました。
もともと日本酒やワインで用いられていた「辛口」という評価軸は、ビールでは「コク」の苦みと一緒になっていました。
これに対して、アサヒビールは、「コク」とはまた別の「辛口」という評価軸を強調することによって、顧客の現在のニーズに応えるとともに、既存の競合との大きな差別化に成功していきます。
ポジションをとるということは、製品の位置づけをはっきりさせるということです。
そして、他の製品との差別化を図ります。
その実現にあたっては、顧客が何を必要としているのか?…
というこよに気づくこと、そして、現在当たり前だと思っている評価軸の中で考えるのではなく、新しい評価軸の提案を狙っていくことが重要になります。
新しい評価軸の提案は、ただちに、競合他社にはない独自の価値を提供することにつながるはずです。
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