ムンクの「叫び」に描かれた人は叫んでいるのでなかった件

1890年代から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパの都市部を中心に流行した諸芸術の中で、退廃的、神秘的、幻想的な傾向を有する作品群を「世紀末芸術」と呼んでいます。
ノルウェー出身の画家エドヴァルド・ムンクが1893年に作成した絵画「叫び」も、末芸術のひとつに数えられているのです。

ムンクは「叫び」を何種類か描いているのですが、最も有名なものはオスロ国立美術館に所蔵される縦91センチ、横73.5センチの油彩画でしょう。

同作品では、画面中央に描かれた人物が両手を頬に当てて口を大きく開けています。
周囲のドンヨリとした色彩とあわせると「不安げに叫んでいる」といわれても違和感はありません。

しかし、実際に描かれているのは、叫んでいる人間ではないのです…
実はタ暮れ時、突然襲ってきた幻覚・幻聴におののく人が、耳に手を当てて懸命に恐怖や不安と戦っている様子なのです。

これは作者の実体験に基づくものであり、ムンクはオスロ・フィヨルドという場所で、この世のものとは思えない神秘的かつ恐ろしい体験、すなわち、「自然を貫く果てしない叫び」を聞いた旨を日記中に記しています。

ムンクの「叫び」は、叫んでいる人を描いていないにもかかわらず、「叫び」という画題で有名になったのです。




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