ご存知の通り、私たちは、ただ自分の必要なものを求めるだけではなく、自分に必要なものをできるだけ安い価格で求めます。
特に同じ品質であるのならば、1円でも安く買いたいと思うのが心情でしょう。
…とすれば、当然のことながら、価格を下げることができれば、よりたくさんの販売を見込むことができるようになります。
一方で、やはり当然のことながら、とにかく安くすればいいというものではありません。
何よりも、作り手の問題として、過剰な値下げは単なる赤字になってしまいます。
極端な話ですが、ハンバーガー1個作るのに100円の費用がかかるとすれば、100円以上で売らなければ赤字です。
では、赤字にならなければ、後はできるだけ安くすればいいか?…
というと、そういうわけでもありません。
例えば、毎日100個売れている200円のハンバーガーを考えてみましょう。
このとき、100個×200円ですから、1日の売上は2万円です。
さて、赤字にならないように価格を下げてみることにしましょう。
200円を100円にしてみます。
すると販売個数は上がるでしょうから、とりあえずということで、価格を半分にしたので販売個数は100個が200個になったとしましょう。
200個×100円ということで、2万円の売上になりました。
これはあくまで単純化したたとえ話ですが、
おかしな話です。
値下げをして販売個数が増えたのに、結局、売上は変わらない…
要するに、値下げが本当に効果を得るためには、その分だけ販売個数が大きく変化しなくてはならないのです。
ある製品の価格を下げたとき、実際にどのぐらい販売個数が増えると予想されるのか、この傾向値のことを「需要の価格弾カ性」と呼びます。
需要は消費者側の必要を示していますから、ここでは販売個数のことです。
価格の変化に対して、販売個数がどのように変化するのかが問題になります。
需要の価格弾力性は、商材の特性や消費者の嗜好などによって大きく変動します。
例えば、ハンバーガーのような代替品の多い商材は、需要の価格弾カ性は高いといわれています。
需要の価格弾力性が高いとは、少しの価格の変化によって、需要が大きく変化しやすいということです。
マクドナルドのハンバーガーの価格が高いと思うのならば、ロッテリアのハンバーガーにしてもいいですし、あるいは牛丼やラーメンを食べてもいいわけです。
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商品・サービスの需要の価格弾力性
かつて2000年に、マクドナルドがハンバーガーの平日半額セールを実施したとき、販売個数はそれまでの5倍近くに増えたといいます。
価格が半分になったとすれば、販売個数は倍以上にならなければ意味がありませんが、5倍ともなれば、なかなか大きな効果があったといえるでしょう。
来店客数も増え、ハンバーガー以外の関連購買も増えたはずです。
最近では、牛丼業界の価格競争が激しいようです。
同じような効果が期待されているのかもしれません。
これに対して、嗜好性の強い製品や、顧客がこだわりを持ちやすい製品については、需要の価格弾力性が低いことが多いようです。
少々価格が上がっても、顧客が強く欲しいと思っているものであれば、同じように買われる傾向があるということです。
いずれにせよ、値下げという選択肢は、企業にとって諸刃の剣です。
価格競争に巻き込まれてしまう可能性が高いからです。
短期的な問題ではなく、長期的な価格競争を見据えた上でなおその選択が有効であるかどうか?を考える必要があります。
一方で、他社が先に値下げを断行してきた場合や、低価格で参入してきた場合には、より対応に苦慮することになるでしょう。
何も対応しないことや、強い差別化を志向して高品質・高価格を売りにすることは、徐々にシェアを奪われる結果につながります。
低価格で参入してきた企業も、シェアをとることで品質を向上させていくからです。
これは、多くの日本企業が現在直面している課題でもあります。
直接対抗することは最も危ない橋ですが、例えばクーポンやポイントを通じた時限的な値下げや、あるいは廉価版の新しい製品やサービスを検討するといったライン拡張が考えられます。
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