製造現場において、不良品をなくすなどの品質管理手法をQCといいます。
これは1924年に、アメリカのベル研究所のシュバート博士が提唱したもので、1930年代からアメリカ企業に活用され、日本では1946年にGHQの指導により統計的品質管理が導入されました。
その後、QCは製造現場にとどまらず、営業部門や人事部門など全社的な品質管理手法へと進化を遂げていきます。
アメリカでは、必要とされるあらゆる部門に品質管理のスペシャリストを配して、責任をもつという形になりました。
一方、日本では品質管理は社長から社員まで全員が参加する業務改善活動になっていきます。
高い品質の商品をつくり出すためには、研究開発、設計、製造、購買、外注、検査などの製造活動だけでは不十分です。
そこで、営業、販売、人事、経理、教育なども含めて企業活動のすべてにわたって、改善活動を行っているのです。
このような全社規模で行う品質管理活動をTQC(総合的品質管理)といい、海外でも高い評価を得ました。
このTQCに学び、1980年代前半にアメリカで登場したのが、TQM(総合的品質経営)です。
きっかけは、マルコム・ボルドリッジ賞の発足でした。
これは米政府が経済活動の停滞を打破すべく、従来の経営手法を変えた企業に賞を与えるもので、顧客が満足する経営品質の改善をトップのリーダーシップのもと、全社的に実施し、優れた経営システムを創造した企業に対し、アメリカ大統領が表彰するものです。
ボーイング・エアロスペース・サポート社が業績の向上、キャタピラー・フィナンシャル・サービス社が顧客満足度の向上などで受賞しています。
このマルコム・ボルドリッジ賞がTQMのモデルになったのです。
TQMの実践法は、組織目標の決定、プロセス・マネジメント、継続的改善の段階を踏み、経営の質を高めることにありました。
日本企業が積極的にとり入れてきたTQCは、生産現場を中心とした3M(ムリ、ムダ、ムラ)を排除するのが一般的です。
一方、TQMは経営のすべての領域にかかわる活動の質を、トップのリーダーシップのもと総合的かつ有機的にマネジメントする仕組みです。
また、プロセス改善の目標と基準を市場や顧客満足に置いている点も大きな特徴です。
つまり、TQCは社内視点からの経営品質改善であるのに対し、TQMは顧客視点からの経営プロセス改善といえるのです。
たとえば、アメリカの航空会社が導入したeチケットというものがあります。
紙の航空券の郵送などが必要ないために紛失や盗難の心配がなくなり、専用カウンターや自動チェックイン機により、搭乗手続きを短縮することで顧客の利便性を高めています。
これがTQMの顧客視点からの業務プロセス改善でなのです。
このように、顧客指向と品質重視の両観点から経営品質の向上をはかることが、日本企業にも求められています。
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