「宇宙はどうやって始まったのか?」と問われたら多くの人が「宇宙はビッグバンにより生まれた」と答えるでしょう。
しかし、この説も間違いだというのです。
そもそも、その問いに答える側もよくわかっていないのではないかと思われる「宇宙ビッグバン起源説」は、銀河が地球から離れていっていることを知ったベルギーの天文学者ジョルジュ・ルメートルの「宇宙は原子の爆発により始まり、膨張している」というアイデアに端を発しています。
しかし、「宇宙が膨張しているとしても別の説を採る」とする一派もいました。
1948年に、フレッド・ホイルらの提唱した定常宇宙という考えでは、宇宙は膨張していても宇宙の密度が保たれるよう常に銀河の生成が行われており、時間によって質を変えるものではないと説いたのです。
この定常宇宙説と膨張説の対立に終止符を打ったのがアメリカの天文学者ハッブルでした。
ハッブルは700万光年という遠い銀河の観測に成功し、「銀河は全ての方向に同様に遠ざかっており、また遠い銀河ほど速い速度で遠ざかっている」ということを突き止めたのです。
この事実から宇宙全体が均等に膨張していることがわかり、その膨張を遡ると、宇宙の始まりには、もともと全ての物質・エネルギーが高密度に凝縮された点があったと考えられました。
つまり、ハッブルの観測結果を説明するためには、宇宙の起源には小さな点があり、それが爆発し、宇宙は膨張していったという説が最もしっくり来るのでした。
そして、ルメートルのアイデアは、定常宇宙派のホイルによって「宇宙が爆発により生まれたなんて馬鹿げている」という皮肉を込めて「ビッグバン」と名づけられたのです。
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現在は、1981年に日本の物理学者、佐藤勝彦氏によって提唱された「インフレーション理論」が定説となっています。
この説は、ビッグバンにより宇宙が生まれたのではなく、ビッグバンの前にすでに宇宙は存在し、それからビッグバンが起こったという説で、宇宙10のマイナス44乗秒前に、生まれ、10のマイナス34乗秒前にビッグバンが起こったとされているのです。
これは時間にすると人間の感覚では知覚できないほどの、ほんのわずかな時間ですが、宇宙の誕生とビッグバンの発生には確かに時間的なズレがあったと考えられています。
こちらもよくいわれていることではあるのですが、宇宙は無から生まれたとされています。
このことは「インフレーション理論」でも同じようにいわれていますが、物理学において無という状態はなく、限りなくエネルギーのない状態を指します。
しかし、可能な限りエネルギーを抜いた状態でも、真空中には粒子と反粒子が残り、ぶつかり合いながら消滅と生成を繰り返しているとされています。
そして、普通は、生成してもすぐに消滅してしまう粒子の中で、まれに消滅せず急激な膨張を始める素粒子があったとされ、これが宇宙の始まりであると考えられているのです。
生まれた瞬間の宇宙は不確定な状態であり、収縮するか膨張するか挙動が予測できない状態でした。
そして、何らかのきっかけを得て、宇宙は加速膨張し、生まれたばかりの頃は直径10マイナス34乗センチというほんの小さなものであった宇宙が、ビッグバンにより膨張し直径1㎝以上の大きさにまで成長したというのです。
「宇宙ビッグバン起源説」は、アメリカの物理学者であるロバート・ジェントリーやスウェーデンの物理学者でノーベル物理学賞を受賞したハンネス・アルヴェーン博士などにも否定され、現代の物理学界では、疑わしい説と見られています。
それにもかかわらず、教科書では未だに「宇宙の起源はビッグバンである」という説がまかり通っており、この説は真実であると世間も広く信じられているのです。
確かに、宇宙の起源には様々な議論があり、アルヴェーン博士などは、プラズマ宇宙論とう独自の論を唱えていますが、せめて教育の現場だけでも、宇宙ビッグバン起源説は、宇宙の源説の1つに過ぎないという注記を示した方がよいのではないでしょうか。
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