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ビジネスの世界で「事業」という言葉は毎日のように出てきます。
ただ、この「事業」…
良く考えてみると、どのように定義されるものなのでしょうか。
そこで、ここではドラッカーの「事業の定義」と「3つの軸」に関して、お話をしたいと思います。
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ドラッカーの「事業の定義」と「3つの軸」に関して
ドラッカーは、企業は明確で一貫性のある事業の定義を持つべきだと述べていますが、事業定義は組織のよりどころとなり、変化への対応力ともなります。
ただドラッカーは、「わが社の中心事業はエアコンの製造である。だからわれわれはエアコンメーカーとして定義される」というような単純な事業領域が事業定義につながるとしているわけではありません。
事業とは、次のような3つの軸から決まると言っています。
➀環境・・・社会や市場、顧客や競争相手などの動きや変化
➁目的・使命・・・何を最大の目的とし、どう社会に貢献するか
➂強み・・・目的・使命を達成するのにどんな強みを持っているか
➀の環境についてドラッカーは、何によって対価を得る組織かが明らかになるという程度のことしか述べていません。
ここで言いたいのは、企業の内部環境だけでなく、市場や顧客といった外部環境も事業(分野)を定義する大きな要因であるということなのではないでしょうか。
自分たちはこういう事業をしている…
こういう会社だという定義は、内部の論理ではなく、外部の視点からも逆算的に規定されるものだからです。
極端な例ですが、女性や主婦を購買層として想定していない生活用品メーカーがあったとすれば、いくら自分たちがそう主張しても、市場はその会社を生活用品メーカーとは認めないでしょう。
つまり、その会社がどんな会社であるかは「外からの目」によっても規定されるのです。
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事業の定義を明確にする内部要因について
会社内部の自律的な要因(目的や使命、事業のあり方)を定めることは、外部要因以上に大事です。
それが、➁のどんな目的や使命を持っているか、つまり企業のアイデンティティをどこに置くかという点です。
かつて松下幸之助さんが唱えた「水道の蛇口をひねるように、まんべんなくモノを行き渡らせて消費者の向上に寄与する」という水道哲学などは、当時としてはビジネス上の使命感がそのままコーポレート・アイデンティティや事業の定義につながっていった好例です。
さらに、➂の強み、つまり企業が持っているコア・コンピタンスも事業を定義する要因の一つです。
中小規模でありながら、すぐれた技術力や商品力によって大企業を凌駕し、業界最大のシェアを占めるといった「オンリーワン企業」は少なくありません。
こういう企業はその確たる強みによって自社の事業が明確に定義されているというべきでしょう。
以上の「環境」、「目的・使命」、「強み」の3つの軸が有効であるためには、次のような4つの条件を満たさなくてはならないとドラッカーは言っています。
➀3つの要素が現実の動きや変化と合致すること
➁3つの要素がそれぞれ互いに合致すること
➂3つの要素からなる事業定義が組織全体に周知徹底されること
➃その定義をたえず検証していくこと
➃の検証が必要という点ですが、これはどんな事業定義も時代の変化と共にやがて陳腐化し、有効性を失うものだからだとドラッカーは説明しています。
では、事業定義が陳腐化しないようにするためには、どうすればいいのでしょう。
ドラッカーによれば2つの予防策があって、一つは、3年おきにすべての製品、サービス、流通チャネル、方針を根本的に見直す「体系的廃棄」…
もう一つは、自社の顧客でない人たちについての「ノンカスタマー動向調査」です。
市場の変化の兆候はノンカスタマーから強く表れることが多いという指摘です。
さらに、どんなときに事業定義の有効性が失われたり、陳腐化が進んで事業の再定義が必要になるかという点については、目標が達成されたとき、急速に成長したとき、予期せぬ成功を収めたとき、予期せぬ失敗をしたときをあげています。
つまり、環境、目的・使命、強みという3つの要素に関して自分たちの認識と実際の市場の動きの間にズレが生じていることを示しているからです。
失敗はもちろんのこと、成功もまた会社の目的・使命、危機の時期であるという指摘は、示唆に富んでいます。
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