新井氏の東大ロボットプロジェクトがビジネスの世界を変える?!

日本における人工知能の研究はどこまで進んでいるのか?…
近い将来、ビジネスの世界を変えてしまうかもしれない人工知能について、ビジネスマンは学んでおく必要があるでしょう。

その一旦の研究成果としては2011年にスタートした「ロボットは東大に入れるか?」をテーマにした、通称「東ロボプロジェクト(東大ロボットプロジェクト)」があります。
このプロジェクトは、国立情報学研究所社会共有知研究センター長である新井紀子氏が中心となり、大手電機メーカーなどが共同で人工知能「東ロボ」の開発を進めており、2016年までに大学入試センター試験模試で高得点をマークし、2021年には東京大学の入試を突破することを目標に掲げているのです。

そもそも日本で人工知能の研究が活発化したのは、1982年に通商産業省(現在の経済産業省)が立ち上げた「第5世代コンピュータプロジェクト」によるもの…
当時から人工知能によって言葉の理解や機械翻訳をすることが目標に掲げられていたのですが、当時の研究は演繹的(えんえきてき)なものでしかなく、「〇〇だから✕✕になる」という論理を数珠つなぎにしていき、そこから結論を導き出すしか方法がありませんでした。
そのため結局、有用なアプリを作ることができず、失敗したのです。

現代の人工知能研究では、演繹的なものだけでなく帰納的…
つまり多くの観察事項から類似点をまとめることで結論を引き出すことが重要とされています。
そんな中で、演繹的にも帰納的にも人工知能を活用できる場として、東ロボプロジェクトが発足したのです。

東ロボは、受験する科目ごとにそれぞれの研究者がそれぞれの解き方をプログラミングしています。
例えば歴史の教科では、世界史や日本史の教科書の情報がまるまる東ロボの中に組み込まれていて、設問の言葉の中から関連しそうな固有名詞や単語をキーワードとして、組み込まれた教科書の該当する部分を探し出し、センター模試の4つの選択肢の中から最も近いものを見つけ出して解答するようになっているのです。

教科書の情報が全て組み込まれているなら間違えようがないと思われるかもしれませが、人工知能が設問を解読するだけでも非常に高度な技術が必要となります。
設問の文章が長くなればなるほど人工知能の理解は不正確となり、間違うことが多くなってしまうのです。

プロジェクトリーダーの新井氏が、「コンピュータは、人間のように1を聞いて10を知ることはできず、10を知らせるためには1TB(テラバイト)の情報量が必要」と語っていることからも、設問の一つ一つを理解させる苦労が感じられます。




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新井氏の東大ロボットプロジェクトの結果は?


2015年6月、東ロボは翌年に控えた「大学入試センター試験模試で高得点をマークする」という目標を実現させるため、進研模試「総合学力マーク模試」を受験しました。
その結果、国語は200点中90点、数学1Aは100点中75点、数学1Bは100点中77点、英語(筆記)は200点中80点、英語(リスニング)は50点中16点、物理は100点中42点、日本史Bは100点中55点、世界史Bは76点となり、偏差値57.8をマークしたのです。

東ロボの5教科8科目の合計点は950点中511点で、一般学生の平均合計点が416点だったことからも、まずまずの成績と言っていいでしょう。
それぞれの科目を別々の研究者が担当しているとはいえ、国語と英語以外ではそれほど一般学生の平均に劣るものはなく、数学と世界史Bに限っては一般学生の平均を大きく上回る結果となったのです。

ちなみに、今回東ロボが収めた成績だと、私立大学の441大学1055学部、国公立大学の33大学39学部で合格する可能性が80%以上になるといいます。
これなら、2021年に東京大学の入試を突破することも俄然現実味を帯びてきたように思えますね。

それでも、新井氏は「東ロボは東大に入ることはできないだろう」と予測しています。
なぜなら、研究を進めれば進めるほど人工知能は知識を増やしていくわけではないからだとのこと…
人工知能も人間と同じようにできないことが絶対にあり、必ずどこかで限界を迎えるため、東大に入るほどの成績を収めることは難しいと考えているようなのです。

もし、2021年に東ロボが東大入試に失敗したとしても、それまでの努力は決して無駄にはならないでしょう。
人工知能を限界まで育て上げることで、どこまで人間からロボットに代替が可能なのか?…
また、どこからが不可能なのか?…
その一端を知ることができるのですから。

人工知能の利用という話になると戦争にばかり注目が集まってしまいますが、これからの未来はさまざまな場面で人と人工知能が共存することが必要となってきます。
この実験は、今後人間は何をすべきでロボットは何をすべきか、その道を示してくれるかもしれません。
ただ、東京大学入試までにはまだまだ時間があります。

東ロボは本当に東大に入れないのか、それとも入ることができるのか?…
答えは2021年にならなければわからないのです。




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