まさか?!…と思われるかもしれませんが…
「だまされて退職届を書いてしまった」というケースがビジネスの世界では実際にあったりします。
例えばこんなケースです。
Aさんは人事課長から、「当社は近く他社に吸収合併され、大量の整理解雇が行われる。夢があるならば早く別の会社に行った方がいいのでは?」と言われて退社しました。
しかし、あとで聞いたらそんなことは全然なく、人事課長がわざとウソをついていたことが発覚しました。
さてAさんはこの退職届取り消せるのでしょうか?
このように自分の意思で退職するなら問題ないのですが、このケースのように「自分の本意でないのに、自分から退職を申し出る」という状況もあり得ます。
こういったケースは、それが「強迫」、「錯誤」、「詐欺」のいずれかで状況は変わってきます。
基本的に退職の意思表示が強迫や錯誤によるものであったり、真意でないときは、民法の規定により取り消されたり、無効になったりします。
例えば、長時間にわたり一室に押しとどめ、懲戒解雇をほのめかせて退職の申出をさせるようなケースは「強迫」となり、社員からの退職の意思表示の取消しが認められます(民法96条1項)。
会社側が社員に畏怖心を生じさせ、退職の意思表示をさせたような場合です。
次に「錯誤」です。
これは、集金した大金が紛失したと思い込んでしまい、責任を取ろうと退職願いを出したのですが、実際は紛失していなかった…
というようなケースが例に挙げられます。
これは無効です(民法95条)。
最後の「詐欺」(民法96条1項)が今回のようなケースです。
これももちろん、取消しが認められます。
では、本当に辞めるつもりはないのに、会社の不当性を告発する意味を込めて、「辞表を叩き付ける」という場合、どうなるのでしょうか?
これもドラマなどでよく見かけますよね。
ちなみにちゃんと用語があり、こういったケースを心裡留保(外に現れた意思表示と内心の真意がくいちがうこと)といいます。
この場合ですが、真意でない意思表示も原則としては有効とされます。
つまり会社が退職として取り扱ったとしてもやむを得ないのです。
ただし、社員の真意でないことを会社側が知っていたか、あるいは知ることができたことを社員が立証すれば退職は無効となります(民法93条)
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。