ブランドは、「名前やマーク」である以上、それ自体としては実質的な中身を持ちません。
そのため、意味を中心に成り立つブランドエクイティは見えざる資産とも呼ばれます。
見えざる資産を構築するブランドには、大きく分けて3つの機能があります。
それは、➀保証機能、➁識別機能、➂想起機能です。
➀保証機能とは、製品にブランドをつけることによって、その製品が誰によって作られたかが明示され、責任の所在が保証されることをいいます。
保証を通じて、企業は顧客から信頼を得ることができるようになります。
➁識別機能とは、ブランドの付与によって、他の製品との明確な区別が可能になることをいいます。
あるいは逆に、同一ブランドによって供給される製品は同質となります。
この同質性については、農作物がわかりやすいでしょう。
リンゴやジャガイモを考えた場合には、一つ一つ形や大きさは微妙に異なっているはずですが、それらはブランドがあれば同じものとして
理解されます。
言うまでもなく、➀保証機能や➁識別機能は、ことさらブランドを強調せずとも、通常販売されている製品にも備わった機能です。
ブランドは古くは家畜の焼印だったのですが、この当時の焼印としてのブランドの役割とは、その製品や家畜が誰によって作られたのか、誰
の所有物であるのかを示し、偽物を含む類似した他の製品や家畜とを区別することに大きな目的がありました。
今日、ブランドが資産(エクイティ)として注目される背景には、➂想起機能への注目があります。
想起機能とは、ブランドの付与によって、特定の製品やサービスを通じて、ある種の知識や感情、あるいはイメージなどを思い起こさせることをいいます。
まさに意味に関わる機能がこれです。
想起機能は、細かくは「ブランド認知」と「ブランド連想」とに分かれます。
そして、ブランド認知には、ブランド再認と、ブランド再生があります。
例えば、ナイキのマークである「スウッシュ」を見て、そのマークを知っていると答える人の比率が高いのであれば、ナイキ・ブランドの再認率(知名度)は高いということになります。
また、シューズといえば「ナイキ」を思い出すという人の比率が高いのであれば、ナイキ・ブランドの再生率が高いといえます。
多くの人々に再生されるブランドは、購買時に思い出される可能性も高く、購買される確率も高まります。
一方、「ブランド連想」、そのブランドから、顧客が何らかの知識やイメージを連想する効果を指します。
例えば「アップル」というブランドは、人々の心の中で「iPhone」や「Mac」といった製品の直接的な知識はもちろんのこと、「創造性」や「デザイン」といったイメージと結びついています。
あるいは、ネスレ の「キットカット」であれば、単に「お菓子」や「チョコレート」というだけではなく、「きっと勝つ」や「お守り」、「受験」、「青春」といったイメージが連想されるはずです。
その具体的な意味やイメージは人それぞれ異なっており、言葉ではうまく表せないような体験も含まれます。
しかし、いずれにせよ、ブランド連想の内容によって、当該ブランドは製品・サービスを超えた付加価値を手に入れることになります。
ブランドに対して意味を付与していくためには、そもそもそのブランドが認知されたものでなければなりません。
誰も知らないブランドには、誰も意味を付与することができないからです。
その意味では、ブランドの出発点は、製品やサービスそれ自体であるともいえます。
ここからブランディングが始まるわけです。
認知が高まるにつれ、ブランド連想として多くの意味を付与していくことが可能になっていきます。
これらは相互に影響を与えつつ、当のブランドを顧客にとってかけがえのない存在にします。
ブランディングには順番があり、また時間がかかります。
知名度があるだけでは強いブランドとはいえませんし、品質がいいと評価されているだけでも強いブランドとは言えません。
これらは、強いブランドの条件の一つでもあるのです。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。