相手のことが好きすぎて、なんとしてでも手に入れたい、結婚したい。
この人と付き合えたらなんでもする!
そして至れり尽くせり・・・・。晴れて恋人になり、結婚をする・・・。
そこまでして、相手があなたに完全に心を開き、心のそこから好きになってくれれば、それは大成功です。
しかし、どんなに頑張っても一方通行のまま、成り行きで結婚をしても、最終的にはほぼ虚しい結末しか待っていません。
結婚を決める前に一度冷静になり、考えてみることも必要です。
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一方的な恋愛はやっぱり上手くいくのが難しい?
ある方のお話です。
離婚の危機に瀕していた男性がいました。
離婚など、いまどき珍しくもないのだが、彼のケースはちょっと変わっています。
彼とのつきあいの始まりは10年ほど前になります。
取引のある証券会社の新入社員として現れました。
長く担当してくれた営業マンが転勤になったため、その後任として挨拶に来たのです。
有名私立大学の経済学部を卒業したばかりでした。
文武両道の男です。
高校時代、野球で甲子園大会に出場したこともあるが、その大学にはスポーツ推薦ではなく一般入試で入学しました。
入学後も選手として活躍し、四年生のときには主将も務めました。
身長一八五センチはあるでしょう。
胸板は厚く、脚も長い。
鍛え抜かれた体だけにスーツも似合う。
おまけに日本人とは思えぬほど彫りの深い顔の持ち主で、男の私から見ても、かなりハンサムです。
そんな彼が沈痛な面持ちで相談に来ました。
一年ほど前のことです。
「妻から、しばらく別々に暮らさないかといわれたんです。ほかに好きな男ができた、というわけではないんですが・・・・」
詳しく聞いてみました。
彼は、彼女にはじめて会ったときから「この人しかいない」と心に決めて、猛烈にアタックしました。
一年間のつきあいでも尽くしに尽くしました。
彼女の両親も非の打ちどころのない彼にゾッコンで、強力に後押ししてくれました。
その甲斐あって、彼女は彼のプロポーズを受け入れました。
挙式のとき、新郎の彼は感極まって号泣したそうです。
入社以来、八年間がんばって貯めたお金と親からの援助でマンションも買いました。
犬好きの彼女の願いを聞き入れて小型犬のポメラニアンも飼った。
共働きだが、朝が弱い彼女に代わって朝食もつくった。
掃除、洗濯も六対四で彼の負担率が高い。
休みになれば彼女の実家にもマメに顔を出すそうです。
惚れた弱みといってしまえばそれまでだが、至れり尽くせりで新婚の奥さんに接してきました。
ハンサムで真面目で献身的となれば、ふつうはこういう夫に感謝して恩返し、といきたいところだが、彼女はそうではありませんでした。
最初は蜜月だったのだが、結婚後半年くらいして彼女の様子に変化が表れました。
「朝ごはん、できてるよ」
「食欲ないの」
「たまには映画でも見に行こうか」
「疲れているから、家で寝てる」
大喧嘩をするわけでもありません。
決定的な争いが生じるわけではないのだが、二人の会話に微妙な変化が表れました。
そして「しばらく別々に暮らさない?」という彼女からの提案があったのだと言います。
彼はこの話を聞いて、残念だが彼の結婚は終わるだろうなと直感しました。
彼女はもともと彼を愛してはいなかったのです。
これからもその気持ちは変わらないと思ったからです。
世の中には、こうした「愛の一方通行」の悲劇があります。
どんなに片方が相手を愛していても、もう片方が異性としての愛情を感じなければ、二人の関係は長続きしません。
はじめのうちは、どちらかの一方通行であったとしても、相手の愛情を受け止めて互いに愛し合えるようになることも少なくありません。
「情に絆される」という関係です。
だが、彼女はそういう人間ではなかったのでしょう。
彼女は、愛されれば愛されるほど、尽くされれば尽くされるほど、その関係をうっとうしいと感じるタイプの女性だったのです。
たぶん、彼女にとって、愛とは能動的でなければならないのです。
花にたとえれば、自分が気に入った花を自ら手に入れることでしか、愛を感じられない。
まず、自分の愛が先に生まれなければ燃えることのできない女性なのでしょう。
そのことに彼女自身も気づかぬまま、彼のプロポーズを受け入れてしまったのです。
彼の強い思いを、心地いい女王様気分のまま自分も彼を愛しているとカン違いし、本当の自分の気持ちを確かめることなく結婚に応じただけなのです。
こういう関係では、いかに彼が彼女を愛し、誠実な言葉を重ね、献身的に振る舞ったとしても、残念ながら彼女の愛を得ることはむずかしい。
彼女にとって、彼は「愛することのできない男性」だったということです。
どんなに相手を愛していても、自分が本当に愛されていない関係なら、結婚はしないほうが良いでしょう。
そんな関係は、いつか必ず破綻します。
「好きな男のもっとも曖昧な言葉でさえ、好きでもない男の明白な愛の言葉よりも心をかき立てられるものである」
フランス文学の不朽の名作『クレーヴの奥方』(ラファイエット夫人著)の一節です。
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人間って可哀想な生き物だと感じました