日本の企業はこれまで自社の経営資源を無駄にせず、いかに組み合わせるかを考えてきました。
しかし、今日ではグローバル競争、ハイテク技術革新、スピード経営の時代となり、M&Aや新規事業といった外部も視野に入れた経営戦略、事業戦略の立案とその実現のための構造改革が求められています。
また、業績不振からリストラ(事業の再構築)を迫られる企業も増えてきます…
このような背景から、攻めの姿勢であっても、守りの姿勢であっても、構造改革の拠り所として注目されている概念が「選択と集中」なのです。
企業は、ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源をもち、その資源を事業に投入することで企業活動を行っています。
既存の事業を拡大したり、新しい事業を興すためには、より多くの経営資源となるビジネスに自社のもつ経営資源が必要になるでしょう。
とはいえ、企業のもつ経営資源は無尽蔵ではありません。
もはや銀行からいくらでも資金を借りることができる時代ではないのです。
そこで企業は、限られた資源を有効に活用するために事業分野の「選択と集中」を行うわけです。
先に紹介したコア・コンピタンス経営の概念は、他社に比べ自社に戦略的優位性がある事業に力を入れています…
あるいは育てていくもので、事業の数はいくらでも構いません。
しかし、「選択と集中」の概念は異なるのです。
得意分野に集中し、事業の数は少なくすることができるからです。
具体的には、今後の自社の方向性から得意な事業を選び出し、それ以外は縮小、売却、アウトソーシングします。
そして、選び出したコア(中核)を集中的に投下する経営戦略です。
コア・コンピタンスは積極的に優位性のある事業に資源を投下するのに対し、「選択と集中」は限られた資源の中で生き残りをかけ、差別化によって優位性を発揮します。
選択と集中の成功事例としては、ネットバブル崩壊後の2001年に、記録的な減益となった米国メリルリンチ証券が挙げられるでしょう。
同社は各領域トップ10に入る規模を目指す戦略から利益重視へと戦略を転換…
そして、個人顧客をその運用資産規模に応じて三つに分類しました」」。
それぞれに包括的な金融サービスを提供する“トータルメリル戦略”を推進しています。
特に資産100万ドル以上の富裕層に経営資源を投下し、従来の証券業務に加え、不動産ローン、クレジットカード、保険などを扱い、顧客へ高度なアドバイザリーサービスを提供…
このような富裕個人客に集中する戦略によって、見事に立ち直ったのです。
日本では1990年代に地場証券からインターネット専業証券に転換した松井証券が挙げられます。
同社は従来の営業スタイルをすべて捨て、ネット販売に特化することで業績を伸ばしました。
このように、単なるリストラクチャリングを超え、事業モデルの再構築に進むことが成功する上での鍵となるのです。
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