マーケティングにおける「ノーブランド」とい選択の意味

強いブランドを構築することは、マーケティング活動にとって大きな目標となります。
ブランドに対する意味を顧客に醸成させ、ブランドと顧客の関係を強固にしていくためにマーケティングは多くの努力を必要とします。

とはいえ一方で、こうしたマーケティング活動はコストがかかるということもできます。
強いブランドは売上や利益にも結びつくと考えられますが、ブランドだけが売上や利益に結びつく唯一の要素ではありません。

今日の企業は、複数の事業を抱え、数多くの製品やサービスを生産、販売しています。
これらの製品やサービスすべてに対して等しくブランディングを行うことは困難です。

その中では、ブランディングしないという「ノーブランド」の選択肢も当然考えられます。
ノーブランドは、ブランディングが持つメリットを得ることができない代わりに、ブランディングのデメリットをかわすことができます。

ブランディングのデメリットとは、1つには、多くのコストがかかり、時間がかかるということです。
ひとたび強いブランドが構築された後も、ブランドの維持にはコストがかかります。

そして、強いブランドであればあるほど、ブランディングに失敗した場合の影響を受けやすく、ちょっとした失敗によっても大きくブランドが毀損されやすいリスクが生じます。
不祥事が起きた場合はいうに及ばず、ちょっとしたブランド拡張の失敗であっても、強いブランドの場合にはブランド全体に影響が及んでしまうことがあります。

ブランディングしないという場合には、ブランディングされている製品やサービスに比べて、低価格で販売できることが多いはずです。
これは、ブランディングに必要なコストが削減されることで、低コストのラベリングやパッケージング、広告費などについても抑制すること
が可能だからです。
したがって、とにかく価格の影響力が強い日用品などでは、積極的にノーブランドでマーケティングを行うことにも十分な理があります。

さらに、特に製品・サービスそれ自体が優れている場合も、ブランディングを行う必要はあまりないといえます。
先に、ブランドと製品の違いを確認しましたが、多くのメーカーでは、ブランディングと称しながら製品・サービスそれ自体の技術特性や質の高さが強調されているように思います。

もちろん、優れた製品・サービスの開発、維持はブランディングに貢献しますが、それがすべてではありません。
単独でする方が効率よくできるかもしれません。

ノーブランドに関係して、小売業者がメーカーに委託して生産を行い、自身のブランドにして販売するというPB(プライベートブランド)という方法があります。
PBの場合、通常のメーカーによるブランド(NB:ナショナルブランド)は使わないということになり、必要に応じて小売業者の側でブランディングが行わることになります。

PBは基本的に広告費などを削減することでコストを抑え、低価格で販売することを大きな目的としています。
ノーブランド戦略の典型だといえるでしょう。

先に見たSPAの仕組みもまた、PBに近いものです。
ただ、SPAの場合は、小売業者が自ら製造工程を内製化しようとします。
これに対して、PBでは、あくまで製造工程はメーカーに委託されることが多いといえます。

面白いことに、ノーブランドを標榜しながらも、最終的には優れたブランドが構築されていくことがあります。
その最たるものは、「無印良品」というプライベートブランドでしょう。

無印良品は、その名の通り、本来は印を持たないノーブランド製品であり、西友グループのプライベートブランドとして始まりました。
しかし、無印であってもよいものを提供するというコンセプトはやがて消費者に受け入れられていくことになります。

そして、時間の中で、無印良品自体が、優れたブランドエクイティを有するブランドになっていきました。
今では世界に進出するブランドになったことはご存知の通りです。

ブランディングをしないということが、逆に強いブランドを作り出すこともある。
これはひとえに、ブランドが意味の体系であって、あらゆる意味を取り込む可能性があるということに由来しています。
それは、ブランドの無限の可能性を示すものであるとともに、長期的には、うまいマネジメントなくしては持続できないということを示しています。

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