マーケターである以上、ヒット製品を作り出すことは大きな夢の1つに違いありません。
ヒット製品とはいわないまでも、コンスタントに売れ続ける製品を作ること、マーケティングの論理はそのためにあります。
けれども当然、それは難しいことです…
よほどの天才か鬼才でない限り、狙って爆発的なヒット製品を作ることはできないでしょう。
コンスタントに売れ続けることですら、容易ではないかもしれません。
マーケティングは、確かに、より効果的に製品やサービスを提供する術ですが、少なくとも、爆発的なヒットを作りだすための論理を持ちあわせているわけではないと思います。
この点は、少し強調しておいた方がいいかもしれません。
マーケティングは魔法の薬ではありません。
ヒット製品を直接作る術は持ち合わせていませんが、製品のヒットがどのように生まれていくのかについては、ある程度説明することができます。
社会学者のエベレット・ロジャースによって示された普及理論を紹介しましょう。
普及理論には、ヒットを作るためのヒントも隠されています。
普及理論は、新しい製品が市場に投入された際、どのように普及していくのか?…
すなわち多くの人に受け入れられるヒット製品となっていくのかを、正規分布という釣り鐘型のグラフに従って説明しています。
簡単にいえば、最初に、ごく少数の人々が新製品を採用します(イノベーター)。
次に、もう少したくさんの人が採用し(初期採用者)、途中から大きなボリューム層が新製品を採用して1つの流行を作り出す(前期・後期追随者)。
その後は新規に採用する人々は減っていき、最後は結局新製品を使わないという人が少し残る(遅延者)というわけです。
普及理論は、新製品の採用にあたって、異なった購買行動をとる複数のグループがあることを示しています。
まず、イノベーターは新製品に対して強い興味を持った人々です。
彼らは、新製品をいち早く手に入れるというわけですから、そうした情報に非常に詳しく、その新製品を使いこなす能力も持っているのでしょう。
パソコンでいえば、いわゆるマニアやオタクと呼ばれる人たちに近いかもしれません。
これに対して、次に新製品を入手することになる初期採用者は、イノベーターほど新製品に対して強い執着心を持っていません。
パソコンそのものが好きな人というよりも、パソコンを使って仕事をすることに慣れている人や、より効率的に仕事をこなすことのできるパソコンを求めている人、ということになります。
イノベーターがパソコン技術それ自体に興味のある人だとすれば、初期採用者は、自身の問題解決に興味がある人です。
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鍵となる「オピニオンリーダー」
初期採用者は、そのためパソコンそのものに詳しいとは限りません。
彼らは、しばしば、イノベーターの行動を知ることによって、新製品の採用を決めます。
マニアの行動を理解できる人々というわけです。
それだけではありません。
彼らは、そうして知った情報を、周りの人にも伝える傾向があります。
彼らは、マニアの行動を理解できるだけでなく、より一般的な言葉で説明し直すことができるのです。
彼らには、オピニオンリーダー特性が備わっています。
イノベーターは、パソコンそのものに強い興味がありますので、あまりその情報を周囲には伝えないようです。
こうして、なぜ、初期採用者の次に大きなボリューム層がくるのかがわかります。
前期・後期追随者と呼ばれる普及に際してもっとも大きな山を形成している人々は、オピニオンリーダーたる初期採用者から情報を手に入れることで、新製品を購入しようと考えるようになるのです。
最も大きなボリューム層となる前期・後期追随者は、具体的な製品技術はもとより、自身の問題解決もあまりはっきりとしていません。
ただ、信頼できる人々から必要だと教えられることにより、あるいは周囲の人が新製品を持っていることに気づくことにより、自分にも必
要なものだと認識するようになるのです。
普及理論は、今日ではいろいろなバージョンが存在するようになっています。
近年のように流行廃りが激しい社会では、前傾のモデルが考えられます。
逆になかなか流行が起こりにくい社会では、後傾のモデルもありえます。
さらには、結局普及しないまま終わってしまうモデルも考えることができます。
大事なことは、普及の形がどうなっているのかではなく、異なった顧客層とオピニオンリーダーが存在するということです。
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