マネジメントのスキル向上は実は誰にもできるらしい件

目次

「マネジメント(management)」には様々な意味があります。
マネジメントという言葉を使ったものには、「人材マネジメント(Human resource management)」、「オペレーションマネジメント(Operations or production management)」など、ビジネスの世界では多様に存在します。

ただ、ドラッカー(ピーター・ファーディナンド・ドラッカー:Peter Ferdinand Drucker)によると、「マネジメント」は誰もが身に付けられるスキルだというのです。
今回はその点に関してお話しましょう。




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「マネジメント」とは何か?


カンパニー制、目標管理、コア・コンピタンス経営、ベンチマーキングなど、企業経営における近代的手法を次々と開発してきたドラッカーは「マネジメントの父」と呼ばれ、組織マネジメントに関して体系的な考察を行っています。

マネジメントとは何か?…
ドラッカーは定義を歴史的に振り返っています。

それによると、初期の段階では「組織のボス」がマネジメントの体現者であると考えられていました。
つまり、「本社ビルの最上階に大きな個室を持つ権力者」にマネジメントが帰属するという考え方です。

次に、権力には責任が伴(ともな)わなくてはならないという考え方から、部下の働きに責任を持つ者、それがマネジメントをつかさどる者だと考えられるようになりました。

しかし、ドラッカーは、こうした定義に物足りなさを感じ、「現代の経営」(1954年)という著作の中で、マネジメントに関する新しい定義を試みました。
要約すれば2つのことを言っています。

まず一つは、マネジメントとは組織社会で知識を行動に具体化することに責任を持つ者であるという指摘です。
ここでいうマネジメントとは経営者を指し、経営に関する知識を、実際に経営を行うことで完成させる責任があるのが経営者だということでしょうか。
知行合一(ちこうごういつ)を主張した「知識は行うことによって完成する」という王陽明の考え方に似ています。

もう一つは、マネジメントとは人間に属するものではなく、「仕組みや役割そのもの」であるとする一種の「マネジメント機関説」を唱えました。
昭和10年、東大の美濃部達吉(みのべたつきち)博士が「天皇機関説」を唱え弾刻(だんがい)された事件がありました。

これは、天皇はひとつの機関にすぎないという学説で、マネジメント機関説はこれに近いもの…
つまり、企業経営を個人の個性に任せすぎることを抑制しようという考え方です。
ドラッカーは「マネジメントとは代替のきくシステム機能である」と考えたのだと思います。

マネジメントを経営者など個人の能力だけに依存させないことは、組織を長続きさせるための必要条件です。
徳川幕府が300年近く存続できたのは、合議制をとって将軍個人の権力を肥大化させなかった点に大きな要因があります。

マネジメントの主体をシステムに置いて、個人に帰属させない…
それが組織の安定的な継続と発展に必要なのです。

もしマネジメントが一人の能力だけに属していたら、その人がいなくなったとたんに組織は機能しなくなります。
個人からシステムへ ここにドラッカーのマネジメント論の先進性があり、近代的な組織経営を可能にした要因があるのです。




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「マネジメント」の近代的な意味、役割、責任


またドラッカーは、マネジメントをスタティック(静的)な組織を生きた存在として機能させる意思や動力に相当するものとも定義づけました。
組織図に表された組織は、そのほまでは仕事を行えません。

組織図に命を吹き込むのがマネジメントの役割です。
ヒトやカネ、情報などさまざまな経営資源を統合し有効に使って、事業を成功に導くためのエンジンでもあります。
したがって、マネジメントこそ組織の本質であり、関係する人たちを生き生きと働かせる仕組みのことだと主張したのです。

しかし、未だに一部の求心力のある人が持っている特権的な権力、彼らが固有に持っている組織管理能力だという認識がほとんどではないでしょうか。
マネジメントは上司に集中している特権でもなければ、普遍化できない特殊な技術でもなく、体系的に学び、教えることができるものです。
このようにマネジメントを身につけることができるスキルと定義づけたこともドラッカーのマネジメント論の新しさであり、すぐれた点です。

以上のようにドラッカーは新しいマネジメント論を提示して、マネジメントに関する定義を一新しました。
その要諦をまとめると、組織の成果を上げ、目的を果たし、個人を幸福にするもの…
マネジメントの近代的な意味、役割、責任をドラッカーはそう定義したのです。

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