世界的な規模において、ブログやSNSといったインターネットツールを利用したマーケティング活動が一般化するようになりました。
これらのインターネットツールは、ソーシャルメディアと総称されます。
ソーシャルメディアは、それまでの多くのメディアとは異なり、消費者を中心にして利用され、相互に情報発信される点に特性があります。この特性は、インターネットそのものとほぼ同じといえますが、多くのユーザーが容易に利用可能なわかりやすいインターフェイスを実装しているという点において、インターネットそのものの特性や、初期のインターネットツールとは少し異なっています。
考えてみれば、インターネットの特性としてしばしば指摘されるオープン性や匿名性などは、ソーシャルメディアには必ずしも備わっていません。
特にSNSを見た場合には、どちらかといえばクローズドなコミュニティを構築することでコミュニケーションが活性化しているように見えますし、サイトの中では相手の特定もある程度可能です。
初期のインターネットツールとの比較からも、ソーシャルメディアの特性がわかります。
例えば、Nifty-ServeやPC-VANといったテキストベースのパソコン通信に始まるネット・コミュニティの歴史は、インターネットの登場を経ていよいよ社会に広く浸透し、ユーザー属性を大きく変化させながら発展してきました。
2ちゃんねるのようなオープンなサイトもあれば、企業が主体となったブランドを中心としたコミュニティもありましたが、参加するのはネットに知識のあるユーザーが中心でした。
同じようにコミュニケーションが実現されるとしても、そこに参加できる人々の特性や、具体的にそこで何ができるのかという点を考えてみれば、その敷居は大きく下がりました。
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ソーシャルメディアと口コミ
ソーシャルメディアの発展に伴い、特に注目を集めているのは口コミです。
マーケティング上のコミュニケーション活動では、古くから、消費者-消費者のコミュニケーションの方が、影響力が強いことが知られていました。けれども、当初は、口コミはマーケティング活動の外部で生じる問題だと考えられてきました。
しばらくすると、こうした消費者間のコミュニケーションにマーケティング活動が入り込み、リニアな関係ながら口コミへの影響が捉えられるようになっていきます。
具体的にいえば、それはオピニオンリーダーの発見を通じて彼らにアプローチし、彼らを通じて広範な消費者に情報を伝達しようとする視点でした。
先に見た情報の2段階流れ仮説をもとにした考え方です。
インターネットやソーシャルメディアの発展は、こうした状況をさらに推し進め、新たな状況を作り出しているといえます。
インターネット上で形成される多くのネットワークは、ネット・コミュニティに代表されるように、消費者間でのコミュニケーションがマーケティング活動の影響を受けながら広く伝播していきます。
ソーシャルメディアによる口コミの発生は、それ以前の口コミと比べると、大きく2つの特徴があります。
第一に、メッセージや意味が一方向に流れるわけではなく、ネットワークにおいて相互に交換されるという点です。
第二に、消費者間で活発にやり取りされるコミュニケーションに対して、マーケティング活動が陰に陽に関わろうしているということです。
第一の点は、口コミをマーケティング活動に組み込む難しさを示しています。
ネットワークで流れる情報は、もはや企業にとって好ましい情報だけではありません。
むしろ、ネガティブな情報のほうが流れやすい傾向すらあります。
情報の流れ方が一方向ではないということが意味しているのは、情報の内容を統制することができないということです。
企業による情報の統制は、さらにネガティブな評価を作り出すこともあります。
それでも、第二の点として、今日ではソーシャルメディアを無視することはできません。
クロスメディアはいうまでもなく、今日的なコンタクトポイントやタッチポイントといった議論は、総じてソーシャルメディアをいかに活かすのかという点に関わります。
ネット時代の口コミは、統制するというよりは支援するというスタンスが向いています。
ネガティブな情報を少なくするためには、もちろんそのための仕組みを整えることが有効ですが、同時に、ネット上のコミュニケーションに直接介入するというよりは活性化のために陰から支援していくといった心構えが必要になります。
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