再生医療の切り札として注目される、iPS細胞。
2012年10月8日、成熟した細胞を多能性を持つ細胞へと初期化できることを発見したとして、山中伸弥教授が共同受賞者ジョン・ガードン卿と共に、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
この「iPS細胞」とは一体どういうものなんだろう……?
という人のために簡単に説明したいと思います。
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「iPS細胞」をわかりやすく簡単に説明するとこういうことだ!
まず「iPS細胞」を一言で説明すると、僅か4つの遺伝子を皮膚細胞(線維芽細胞)に導入することにより、様々な体細胞に分化可能な多能性とほぼ無限の増殖性をもつもののことを「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」といいます。
「人工多能性幹細胞」は英語では、「induced pluripotent stem cells」といいます。
これを略して、「人工iPS細胞」というのですが、最初のiが小文字でPSが大文字というのが、正しい表記です。
これを見て、アップル製品みたいだなあと思った人は、なかなかいいカンをされています。
この細胞を発見した山中伸弥(やまなかしんや)教授は、iPodにならって最初のiを小文字にしたのです。
さて、では簡単に説明すると、多能性幹細胞とは、「身体のすべての細胞に変化できる細胞」という意味です。
普通の細胞は心臓の細胞であれば心臓にしかなれません。
しかし、このiPS細胞は、どんなものにでもなれるというのです。
したがって、臓器の病気になり移植するしかないと診断された場合、このiPS細胞を移植することで、臓器が再生できる可能性が高まってきた、ということなのです。
移植されると人体は拒絶反応を起こします。
そこで、免疫機能を抑制する薬を投与します。
すると今度は免疫力が弱まり、感染症を引き起こしやすいというリスクがでてきます。
人工臓器も、まだまだ実用化に遠いものが多いのです。
自分の細胞であるiPS細胞によって再生された臓器であれば、拒絶反応の心配もない、というわけですね。
iPS細胞は皮膚の細胞からも作ることができるので、細胞を取り出すのに手術は不要です。
細胞を培養して自分の臓器に移植すれば、失われた機能が回復できます。
しかしその一方で、何でも可能になるということは精子や卵子も作れるということなので、倫理的な問題も起きてくるわけです。
現時点での課題としては費用がかかることと、培養に1カ月程度かかるので、事故などで臓器を破壊された急な患者には間に合わないことがあげられます。
しかし、実用化は着実に進み、2014年にはiPS細胞からつくった網膜色素上皮細胞を加齢黄斑変性の患者6人に移植し、治療する臨床研究がなされるまでになりました。
また、iPS細胞よりすごいというので大騒ぎになったのが、STAP細胞です。
「STAP」とは「StimulusーTriggered Acquisition of Pluripotency cells (刺激惹起性多能性獲得細胞)」という意味で、細胞を酸性の溶液に入れて刺激を与えることで、様々な組織や臓器細胞に育つということでしたが、論文に不自然な点があり、捏造(ねつぞう)ということで落着したのはご存知の方も多いのではないでしょうか。
さて、「iPS細胞」はどうなっていくのか…。
研究グループは、2017年前半にも加齢黄斑変性の患者に細胞を移植する手術を行う方向で臨床研究の準備を進めることにしています。
他人のiPS細胞を使う今回の臨床研究は、身近な医療に向けた大きなステップになるだけに、どういった成果を挙げるかが注目されるでしょう。
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