「見込み賃金」の表示は注意が必要?賃金規定について
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求人票に「見込み賃金」で表示した場合、労働条件として確定されてしまうのでしょうか。

結論から言うと、「見込み賃金」と労働契約で示される「賃金」に差異がある場合は、社会の常識や通念に照らして相当な範囲内のもの出なくてはなりません。

使用者は、入社条件に変更がある可能性がある場合は、見込み額に過ぎないことをきちんと明示し、見込み額が確定額として支払われるような期待を抱かせる表示や言動をとらないよう注意する必要があります。

それでは詳しくみていきましょう。




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「見込み賃金」の表示は注意が必要?賃金規定について


職業安定法第5条の3第1項では、労働者の募集を行う者に対しては従事すべき業務の内容や賃金など、求職者への一定の労働条件明示義務が課せられています。

しかしながら、ここで明示が求められているのは、賃金に関しては求人募集をする時点での現行賃金で、一般的には初任給見込み額などとして明示するにとどまり、改めて入社時には、労働基準法第15条に従い、使用者は、労働者に対し、賃金等を確定的に明示するのが一般的です。

労働契約を締結する際に、労働者に明示された労働条件が実際の労働条件と異なる場合は、労働者は明示された労働条件に対する請求権を持つことになります。

しかし、問題は、求人票に記載された賃金額が「見込み額」である場合、求人票記載の金額が労働契約の内容になっていたと判断できるかどうか?ということですが…
この点に関しては、「新規卒業者募集をしようとする会社の求人票に記載してある初任給見込み額は、採用内定者に対し、その見込み額の賃金支給を保障したものとまでは認められない。」という判例(八州事件 昭58.12.19東京高裁)があります。

本件では企業側に義務違反はないとしましたが、「賃金は最も重大な労働条件であり、求人者から低額の確定額を提示されても、新入社員としてはこれを受け入れざるをえないのであるから、求人者はみだりに求人票記載の見込み額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではなく、権利の行使や義務の履行を信義に従い、誠実にこれをすべきものであるとする信義誠実の原則に則り対応すべき」としていることに留意しておくべきです。

このように、求人票に記載された労働条件に「見込み」と明示されている場合、それが採用段階で若干変動することが含みとなっていることからも、募集内容の見込み賃金額等の条件をそのまま実行しなければならない義務は、使用者にはありません。

求人票に記載された「見込み額」は、最低額の支給を保障したものではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての額であり、従って「見込み額」と実際の「確定額」が相違してもやむを得ないものと言えます。

しかし、企業が求人票に示した見込み額を入社時に不利益に変更する場合は、企業は労働者に対し誠実に対応する義務があります。
企業の置かれた状況が倒産寸前のような緊急事態の場合は別として、「見込み額」と「確定額」との差異は、社会の常識や通念に照らして相当な範囲内のものでなくてはなりません。

つまり、その減額の幅、業績悪化の程度、新入社員への説明の対応方法·時期などが論点となり、場合によっては差額損害賠償などが認められる可能性もあります。

使用者は、募集や内定の段階において、入社時の条件については変更がありうること、特に賃金については、これが見込み額にすぎないことをきちんと説明し、くれぐれも求人票の見込み賃金額が確定したものとして支払われるような期待を抱かせる言動をとらないよう改めて注意する必要があります。
また、条件変更を要請する場合は、企業の状況を説明するなど誠意をもって対応し、同意を得ることが必要です。

なお、労働条件明示義務違反、信義則違反に関係する事件としては、求人広告、面接及び社内説明会において新卒同年次定期採用者の平均給与と同等の待遇を受けることができるものと信じさせかねない説明をし、それを信じて入社した者に精神的衝撃を与えたことを認め、このような説明をした企業の行為が、労働条件の明示義務に違反し、「信義誠実の原則」にも違反するとして、慰謝料を中途採用者に支払うよう企業に命じた判例があります。

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