ガルブレイス「不確実性の時代」とその他の著書の主張

「不確実性の時代」(1977年)は、日本でもベストセラーを記録し、タイトルそのものが流行語となって世を風靡しました。
そんなこともあって、著者のガルブレイス(ジョン・ケネス・ガルブレイス)は、もっともよく、その名を知られた経済学者の一人といえるでしょう。

ガルブレイスのユニークな点は、現代の主流派経済学の枠を超えて、広い視野のもとに現代社会と経済の特質をとらえるところにあります。
そのため、特に理論経済学者からは異端視されることも多かったのですが、その鋭い視点と多彩な表現力で幅広い層から絶大な人気を獲得してきました。
これまでもガルブレイスの発言は世界中から注目を集めてきました。

「新しい産業国家」は、ガルブレイスによって1970年代半ばに用いられた概念で、巨大企業が経済的・社会的・政治的に大きな影響力をもつ現代経済社会を指します。

そこでは、資本を所有する事業家ではなく、広く専門的な知識・情報・才能・経験を有する人々「テクノストラクチャー」が企業の意思決定を担う…
企業自体の目的もテクノストラクチャーの自主性の維持とそのための安定した利潤の確保へと変化する…

さらに、その目的達成のために、激しく変動する総需要を規制する必要が生まれ、高度の教育・技術を有した労働力の確保が必要となる…
そこで、テクノストラクチャーは国家の機能に関与し、消費者の行動を規制していく…

その結果、「消費者主権」から国家を巻き込んだ「生産者主権」への移行が生まれると考えたのです。

すなわち、新しい産業国家においては、巨大企業が市場を操作し、価格を調整し、能動的に市場機能に関与する…
この「計画化体制」をガルブレイスは資本主義と社会主義の終着点と見たのでした。

資本主義経済の中で計画化体制が大きな役割を占めていき、次第に社会主義経済に近づいていくといいます。
この「新しい産業国家」のビジョンは、その予見の多くが現実化している現在においてさらに衝撃的であるといえるでしょう。




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ガルブレイスの著書と主張

 

■アメリカの資本主義(1952年)
アメリカ資本主義の「平衡力」を高く評価
完全競争崇拝を批判し、寡占的体制を肯定的に評価
経済学の対象は古い競争市場の分析ではなく、大企業中心に独占·寡占の経済制度に注意を払うべき

 

■ゆたかな社会(1958年)
消費者需要が意図的に創出されている実体を指摘
大企業体制の確立にともなう「依存効果」(生産者が宣伝や販売活動を通じて意図的に消費者需要がつくり出されていること)を指摘
この需要に浪費)は市場機構では是正できず、公共サービスなど収益の低い分野への投資が不足する。この不均衡の是正は豊かな社会の緊急の課題である

 

■新しい産業国家(1967年)
高度に発達した経済社会では、市場機構が実質的な機能を失い、専門的な経営者・技術者の集団である「テクノストラクチャー」と大型政府による管理と計画化が進行していることを指摘
市場に従属する企業という通念を覆し、国家と対等の立場に立つテクノストラクチャーによる計画化体制を提言

 

■経済学と公共目的(1973年)
テクノストラクチャーと国家の癒着を是正する政策を提言
産業国家から公共性を重視した公共国家への移行が必要だと説く




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