「ミルグラムの服従実験」の概要と結果はどういったもだったのか?

「ミルグラムの服従実験」を皆さんはご存知でしょうか?
これはアメリカ・エール大学の心理学者、スタンレー・ミルグラム氏が、「人は権威に盲従する」と唱えた法則を実証するために行われた実験です。

ユダヤ人の彼が、1961年にこの法則を打ち出したのは、当時行なわれた、アドルフ・アイヒマン(ドイツのアウシュヴィッツ最終収容所の所長)の裁判に大きく影響しました。

アドルフ・アイヒマンは、ユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の主導的役割を果たしたかどで、逃亡先のアルゼンチンでモサッド(イスラエルの情報機関)に逮捕され、イスラエルで裁判にかけられて絞首刑に処せられました。
その裁判の際、彼は抗弁として自分が主導したのではなく、上からの命令に従ったに過ぎないと主張したのです。

そこでミルグラム氏は、アイヒマンがいうように、果たして権威に対して、部下が言いなりに服従するのかどうかを試す、有名な「ミルグラムの実験」、別称「アイヒマンの実験」を行なったのです。

この実験は、被験者を「教師」と「生徒」の2つに分けて、「教師」の被験者がどういう反応を示すかを試しました。
そこで、権威ある博士が「教師」に語句とその答えを4つ用意して、「生徒」に選ばせ、答えが間違っているなら、「教師」は罰として「生徒」に、間違いの数に伴い電気ショックを段階的に強く流すようにと指示したのです。

しかし、実は「生徒」はサクラの役者たちで、実際に電圧は加えられていないにもかかわらず、電圧が強まるごとに「生徒」には大げさに痛みを訴えさせて、「教師」の被験者がどう反応を示すかを見たのです。

その結果、「生徒」が演技で痛みを誇張したので、教師の中にはたまりかねて実験を中止する者も出ましたが、驚いたことに「教師」の65%(40人中26人)までが、最大電圧となる450ボルトを、博士に指示されるままに「生徒」に加えていました。
「教師」の被験者は、権威ある博士に言葉で指示されただけで、彼に盲従していたのです。

この実験でミルグラム氏は、人は、たとえ良心の呵責があっても、権威者の指図とあればそれに従い、他人に責任を転嫁させると考えました。

このことから、実生活においても、人は権威者の指図のままに従い責任を取ろうとせず、自分が単なる機械の一部品のような役割しか演じていないとする傾向にある…
と断じたのです。

ところが、これがアイヒマンの裁判中に、大虐殺を主導した彼の行為を正当化する根拠となってしまし、大きな物議をかもしたのである。

ちなみに、フランスの政治スリラー映画「I as In Icarus」(1979年)などでは、重要なシーンでミルグラム氏の服従実験をモチーフにしたと思われる場面が出てきています。




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